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◎開放し、ゆとり空間へ 新幹線高崎駅東口地区は、今や北関東を代表する開発拠点だが、駅から1キロメートル、歩いて10分そこそこにある旧競馬場跡地は広さが10ヘクタール(3万3000坪)もある優良地である。 6年前、公営ギャンブルの不振のあおりで閉鎖された直後は、跡地をどう使うかについていろいろ取りざたされ、それなりに市民・県民の関心を集めたが、去年の県民アンケート調査の結果をみると、82%が跡地のことは知っていると答える半面、現状がどうなっているかは知らないという人が半数を占め、関心が薄れている。 実体は、競馬場時代の建物の一部が日本競馬会などの「場外馬券売り場」として使われているだけで、広大な跡地の大半は空き地として遊んでおり、宝の持ち腐れ状態なのだ。 こうなってしまう事情は主に二つあって、一つは全体の64%を占める公有地と36%に当たる私有地がモザイク状に混じり合っていて、地籍の確定すらむずかしい上、39人にも上る個人地主の思惑がまちまちで、一括買収といった整理がつけにくいこと。 もう一つは、虎の子の一等地ゆえの悩みでもあるのだが、「あれも欲しい」「これもつくりたい」と意見がまとまらず、折からの財政難もあって、行政当局の腰が定まらないという事情も大きい。 しかし、いつまでも放置できない問題だとして、県と市は去年有識者による利活用のための検討委員会をスタートさせた。コンベンション施設・芸術文化機能・教育学術機能などを主な候補として提示するとともに、細分化を避けて一体的に活用できるよう、土地の整理を進めるという内容のまとめまではこぎつけている。 その際重要になるポイントとしては、まず、全体構想が前提ではあるが、一つの答えですべてを片付けるのではなく、時代の要請、都市の変化を考えながら少しずつ丁寧に使いこなす発想が大切ということである。ぎちぎちの都市計画から離れてゆとり空間を重視し、何も作らない空き地をあえて確保する「ボイドスペース」と呼ばれる発想は、都市の柔軟性や持続性を創出する上で大切にしたい考え方である。 しかし、現地をご覧になると一目瞭然(りょうぜん)だが、周囲は無粋なコンクリートの塀で密封され、まるで刑務所のようである。 有効活用の第一歩として、まずはこの塀を取り払って見通しも風通しも良くし、散策の道やサイクリングパーク、こども緑地など、少ない投資で市民に親しまれるボイドスペースに衣替えして、そこから斬新(ざんしん)な提案が湧わき出てくるのを待ってはどうだろうか。 (上毛新聞 2010年9月16日掲載) |