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◎学生により紙芝居化を 8月3日付本欄に新島学園短大の山下智子さんが「上毛かるた」の魅力について述べておられた。福島県出身とのことだが、群馬県出身者のほとんどが読み札を暗記しているのに驚いたとあった。そのなかで「心の灯台内村鑑三」、「平和の使徒新島襄」を採り上げ、名前を入れ替えて逆でも良かったのではないかとも。訳も分からずにただ丸暗記の本県人には、なかなかこういう発想は出にくいかもしれない。 「上毛かるた」は現在も競技として広く行われている。それゆえにその面白さから子どもたちに人気があるのだろう。学生の中には「新島城」と誤解している者もいるとか。筆者などもわが群馬を「毛の国」と呼称するなどちっとも知らなかったから「シノブケ」の国ってなんだろうと幼いながら引っかかった記憶がある。「センキョ(選挙)」という言葉は知っていても「センキョウ(仙境)」は知らなかった。つまりは棒暗記で内容の理解はほとんど無しだった。 今更ながら思うのは、読み札の裏に短い解説があって、制作者の気配りがわかるのだが、これにて了解するにはいささか無理があろう。 「上毛かるた」はわが県民の財産だ。世代を超えた「忍者の合言葉」さながらの共通語は、活用次第ではさらに有用な効果が期待できるに違いない。 ところで、「新島城」や「シノブケ」をなくすためにどんな策があるか。 筆者は以前から「上毛かるた」の紙芝居化を提唱している。札一枚ごとに一巻を制作するという構想だ。たとえば「新島襄」ならその生涯を紹介するのもいいし、あるエピソードに焦点を当てたものでもいい。「尾瀬沼」ならばどのような展開が考えられるだろうか。地質的、動植物生息視点などは誰もが思いつくだろう。製作手法も多様であっていい。写真と組み合わせたもの、「仕掛け」と呼ばれる技法を取り入れたもの。解説風ナレーションばかりでは変化に乏しい。筋の運び屋としてキャラクターを登場させるのも一興だ。 現在の紙芝居はおおむね二十枚余が一般的だ。要は誰がシナリオを書き、絵を担当するかだ。筆者は長らく県立女子大の群馬学に注目してきた。その観点から言うと、監修はもちろん必要だが、学生がこの製作に取り組んではいかがかと考えている。あるいは一大学に限る必要はない。制作委員会を立ち上げることも視野に入ることだ。必要な手続きを踏み、完成すれば44巻になる。これを県内全小学校に配布するという構想だ。県外に出て居られる方には親の生地を子に伝えるツールにもなろう。遺産とは心の内にはぐくむもの。一枚のかるた札に込めたい思いは山ほどある。 (上毛新聞 2010年9月9日掲載) |