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◎違いを認め受け入れる 挨拶(あいさつ)の挨は「開く」、拶は「せまる・近づく」、挨拶は「目の前の壁を取り払い、相手に近づく」の意味があります。仕事の関係でたくさんの国々へ行く機会に恵まれましたが、世界にはさまざまな挨拶があります。 日本から一番近い韓国では日本と同じお辞儀の文化があります。中国で一番多い漢族は両手で握り拳を作り、胸にあて挨拶します。タイでは胸の前で両手を合わせて軽くひざを曲げる、とてもチャーミングなしぐさをします。この国では頭に神聖な神が宿ると信じられているため頭にさわるのはタブーとされます。マレーシアでは拳を作り、頭にのせて挨拶。これは「互いを尊敬します」という意味となります。モンゴルは抱き合い、相手のにおいをかいで帽子をかぶったまま挨拶。西アジアのイスラム教徒たちは、左手は不浄とされるため右手だけで握手をし、その手を自分の胸にあてます。 ここでユニークでちょっと珍しい挨拶をご紹介しましょう。チベットでは互いに舌を出して挨拶。これは何と「あなたを尊敬していますよ」の意味なのです。また、アフリカのキクユ族は挨拶の時に相手の手につばをはきかけます。つばには魔よけの意味があり、不思議な魔力があると信じられていて「良いことがありますように」という願いが込められているのです。これを日本でしたら、相手を侮辱したことでけんかとなってしまいそうですね。 私たちの国にはお辞儀という素晴らしい文化があります。立ってする立礼もきれいですが、和室での座礼は世界に誇れる文化のひとつだと思います。ところが私たちは挨拶の時、目を合わすのが苦手。欧米ではこの点に抵抗感があるようです。相手の目をきちんと見て笑顔で挨拶したいものです。ほかにも襖(ふすま)の開閉、座布団の扱いなど、美しい所作は数えきれません。 私たちはもっとこの素晴らしい日本文化を再確認し、身につけ、継承していく必要性を感じます。 各国の空港に降り立った時に、その国ならではのにおいや音、花や植物などで「ああ、今○○に来たんだなあ」と五感全体で感じる思いがあります。残念ながら成田空港からは日本らしさを感じとることができません。今回羽田空港に江戸の街並みができると聞き大変期待している一人です。 同じ「地球人」という観点から、さまざまな異文化を理解しあうこと。それとともに生活の中で相手との「違い」を排他するのではなく受け入れ認めあうことが大切ではないでしょうか。 挨拶は「人とかかわりたいという思い」の表れであり、「その国独自」の表現であり、個においても「その人らしさ」の表現だと思います。日本人として「日本らしさ」を再発見し大事にてゆきたいです。 (上毛新聞 2010年9月1日掲載) |