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◎医・患の意識改革を 小児科医不足や小児救急医療体制の維持が各地で話題となっています。背景には採算の合わない病院小児科の縮小や、若手医師の偏在、女性医師の就労環境の遅れなど医療側の事情に加え、子どもを取り巻くさまざまな要因があります。 核家族化など社会の変容は子どもの夜型化とともに医療のコンビニ化を助長し、夜間や休日の診療時間外に医療機関を受診する子どもたちが増加しました。医療現場では時間外受診者の約9割を占める軽症患者の増加が大きな負担となっています。病気の軽重によらず、夜間でも小児科専門医の診察を受けたいという患者側のニーズもあります。しかし、厚労省の調査結果から全国の6歳未満小児の診療所受診動向を見ると、昼間、小児科専門医を受診している子どもはわずか33%です。小児科医がいない地域も含むデータであるとしても、実に半数以上の子どもが小児科医の診察を受けておらず、適切な医療が施されているのか不安を感じます。 夜間の急な発熱は患者のみならず家族の方も不安に陥れます。そのような時に、対処法を心得ていれば慌てる必要はありません。5年前から全国で行われている小児救急電話相談事業の取り組みは、相談相手のいないご家族にとっては心強い助けとなります。現在、深夜も対応しているのは11府県のみで今後のサービス拡大が望まれます。 三次救急病院でありながら軽症者の診療にも携わる、ある病院では平日夜間の小児科受診者を過去20年間で平均60人から30人まで減少させました。大きな理由は喘息(ぜんそく)患者の減少でした。90年代以降の治療ガイドラインや薬の進歩に加え、日ごろの管理で喘息をきちんとコントロールし、夜間の発作による受診を激減させたためです。 時間外受診を減らすには、医療の側が知識や情報を提供し、患者もこれを共有することが重要です。感染症の感染様式を知れば、手洗いや咳(せき)エチケットで、感染拡大を阻止できます。予防接種は対象者の多くが接種することで病気の流行を防げます。ヒブワクチンと小児用肺炎球菌ワクチンを接種していれば、夜間の急な発熱に対して保護者のみならず、医師も余裕を持って対応できます。経口補水療法(ORT)の心得があれば感染性胃腸炎、熱中症の際にも役立ちます。市販の経口補水液(ORS)も普及し、嘔吐(おうと)や脱水症にはすぐに点滴、という考えはもはや過去のものです。海外で導入されている感染性胃腸炎のロタウイルスワクチンが普及すればORTとともに強い味方となります。 医師も患者も意識を変えることで、小児救急医療の負担を軽減することは可能なはずです。 (上毛新聞 2010年8月20日掲載) |