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シネマテークたかさき支配人  志尾 睦子(高崎市八幡町)



【略歴】県立女子大卒。1999年から高崎映画祭ボランティアスタッフに参加。その後、同映画祭ディレクターとなる。2004年からシネマテークたかさき支配人。



目新しさの功罪



◎本質を根気よく伝えて




 7月も過ぎ、映画業界でも上半期の興行収入ランキングが発表された。興行通信社の調べによれば、『アバター』155億円、『アリス・イン・ワンダーランド』120億円、『カールじいさんの空飛ぶ家』50億円と洋画が上位を占めた。

 いわずもがなの、3D作品がトップ入りした。ここ数年は最高で80億を超える洋画があるかないかという事態であり、上位は決まって邦画だった。それゆえ洋画離れが叫ばれ、大作が売れないのだから小作はもってのほかとばかりに、洋画作品の買い付けを渋る配給会社が多くなった。そうすれば、大作ではないが小粒の良作を細々と上映する私たちのような映画館は品薄という状況にもなり厳しさが増すわけである。

 今期の興行収入額は、数字だけを見ると映画興行の明るい兆しを感じられなくもない。これをきっかけに、再び映画の活気が戻ればいい。本当にそう思う。上位3作品が3D映画であろうとも、その導入が起爆剤となってさらなる発展を遂げるなら言うことない。映画環境や技術の進歩に伴い人々の感覚や習慣が変化するのは当たり前であるから、そこから何かが始まることが大事なのだと思う。一つ懸念があるとすれば、「新しいもの」を追いかけ消費し飽きたらまた次へという構図に、経済全体が振り回されなければいいということだけだろうか。

 3Dに関しては、アメリカではすでに変化が起きているようだ。今夏の3D作品の前売り状況は春の売り上げに比べて数段落ちていて、2Dの子ども料金チケットの売り上げが伸びているという。そうなった背景など詳細はわからないが、単純に3D人気が早くも落ちてきていることに違いはないようだ。遅かれ早かれこうした現象は日本にも流れてくるだろう。目先の新しさにこぞって人が詰めかけてもその耐久時間はとても短いということになる。耐久時間の短さゆえに、そこからの発展がどうも見えてこない気がしてならない。こうして考えるとやはり、高度な技術や目新しさなんてものよりも、普遍的に変わらない物事の本質をじっくりと根気よく伝えていくことにすべての力を注いだ方がいいのではないかと思えてくる。それこそ、すぐに結果が出ないにしてもだ。

 本質に立ち戻ること。そこが一番難しいのだけれど一番大切で面白いことなのだと思う。映画を観(み)る。映画を楽しむ。映画を感じる。それらは一朝一夕にはいかないことだ。時間も体力も要する。それらの映画の本質が伝わってこそ初めて3D映画の醍醐味(だいごみ)も生きるというものではないだろうか。昨今の映画業界の設備投資や興行形態の大きな変化を受けて、そんなふうに考えている。映画を上映する側がいま一度そのことをしっかり肝に銘じるべきだ。







(上毛新聞 2010年8月16日掲載)