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◎日本農業再生への道 かつて有機栽培は技術よりも志に依拠する重労働で、ただ消費者によって支えられてきた農法でした。しかし今日、有機農業基本法など法的整備も進み、重要な一角を担うとともに草を出さない技術も確立してきています。100枚を超える田んぼのうち今年草取りに入ったのは2枚だけです。一方農薬に依拠した農法では、農薬に耐性のできた草や害虫に対応できない現象も起こっています。 農業は自然環境を巧みに利用することで成り立つ産業です。農薬や化学肥料を多用する近代農業の普及によってその原点が見失われ、同時に伝承されてきた技術も失われましたが、有機農業者たちは試行錯誤を重ねながら自然と共生する技術の確立に努力してきました。農園でも20年の試行錯誤を経て、米・麦・大豆を2年の間に輪作することで抑草に成功しています。 大豆作に向かない湿田では代掻(か)き時に大豆を散布することで同じ効果を上げることができます。この技術によって田の草取りから解放されると同時に、大豆の自給率向上に貢献することができます。 福島県の有機農業者によって提唱された、米ぬかペレットによる除草は湿田で効果を上げており、農園が提唱する2年3作方式による大豆利用の除草技術は乾田で効果を発揮します。今や有機稲作の技術は確立しており、農薬化学肥料を多用する必要はありません。 しかしこうした技術的水準や到達点があまり知られていないのは残念なことです。農薬を多用する農法は、消費者、農業者双方に健康被害をもたらすリスクが高く、病害虫に耐性をもたらし、次々と新しい農薬開発を余儀なくされるような悪循環に陥っています。農薬は毒性があって初めてその役割を発揮する故に厳しい毒性試験が課せられるわけですが、安全と言われた農薬が使用禁止になる例は後を絶ちません。 かつて大量に使用された有機リン系の農薬は、神経への悪影響が懸念されることから、ここ数年で急速にネオニコチノイド系農薬に切り替えが進んでいますが、まだ使用され始めて間もないのに、ミツバチの大量死を引き起こすなど安全性に不安があります。 日本の農薬使用量は世界一です。一方で化学物質過敏症やアトピー、がんなど難治性の疾患も急増しています。昔使われることのなかった農薬と、昔はなかった疾病との関係を思うとき「農薬を使わなくてもできるものには農薬を使わない」という農業者が増えることを望みます。日本農業が有機栽培へと大きく舵かじを切ることが日本農業の再生を可能にする道だと思います。農園では有機栽培の技術指導も行っています。これまで有機栽培なんて無理と思っていた方も思い切って始めてみませんか。 (上毛新聞 2010年8月7日掲載) |