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県鳥獣被害対策支援センター所長  久保寺 健夫(高崎市井出町)



【略歴】1970年に県庁に入庁、自然環境課、蚕糸園芸課などで勤務。2010年4月から現職。人や農作物に害をもたらす鳥獣の対策を担当している。



センター新設から4カ月



◎継続できる対策を模索


 鳥獣被害対策支援センターが新設されて4カ月経過したが、この間、ニホンザルに食い荒らされたシイタケの原木置き場に始まり、イノシシが出没し今後被害が急増するおそれのある集落、ツキノワグマによるスギ・ヒノキの剥(はく)皮等々、農林作物への被害現場に出向き、意見を聞く機会が多くなっている。

 夏本番となり、県内も記録的な猛暑が襲来するなか、トウモロコシなど畑の作物も収穫のピークを迎えている。地域でニホンザルの追い払い等の活動を続けている皆さんのブログでは、サルたちも農作物を狙った活動を開始していると報告されている。

 これから秋にかけてがイノシシ、ニホンザル、ツキノワグマたちも農作物を狙って活動を活発にさせる時期であり、被害に悩む皆さんはもろもろの対策に大忙しではないだろうか。

 当センターでも、農業事務所・市町村と協力し、対象獣種を特定したうえで集落の皆さんが取り組める対策を検討、効果的な電気柵等の設置作業と、その効果検証を進めている。

 先月22日には、昭和村のトウモロコシ畑で、集落の皆さんの参加を得て、ツキノワグマ、ニホンジカ対応の電気柵設置作業を行った。この地域、10年前にはシカの被害はなかった地域だったが、最近ではイノシシも出没するとのこと。

 この地域だけではなく、最近は同じ農地に出てきて被害を与える鳥獣も多様の様相を見せており、2メートルの高さでも跳び越えるシカ、周辺の木をよじ登るサル、ハクビシン、最近は柵の下から穴を掘り侵入するアナグマなどが出没することが報告されている。

 県では数年前から被害地域でセンサーカメラを仕掛けているが、そこにはいろいろな動物が写っている。富岡市のイチゴ園では、ハクビシン、タヌキ、アナグマが写し出されていた。

 昭和村のトウモロコシ畑でもセンサーカメラを設置したが、果たしてどんな鳥獣が写っているか、楽しみであるが、その後の対策を難しくなるような動物がいないことを願っている。

 山の中での生息鳥獣の多様化は、豊かさとして評価すべきだが、農地周辺での複数種の出没の場合、これまでの電気柵等では対策が難しいことを意味している。

 昭和村での作業中、こんなことを考えた。「シカ、イノシシ等山から下りてくる大型獣は、山際に金網柵を設置し、ある程度(7割くらい)の侵入を防ぐ。残りと都市周辺を含めた小型獣は多獣種対応の電気柵等で農地を囲って被害を防ぐシステムはできないか」

 地域の皆さんが継続して取り組める方法について、センターとして、検討を進めていきたい。







(上毛新聞 2010年8月4日掲載)