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◎自分の良さを知ろう 若者の就職や転職の相談の中で「自己PRが書けない」という相談は多い。「自分にはアピールするものは何もないから応募できない」とか、「自分は学生時代何も力を入れてこなかったし、人ともかかわってこなかったから何も書けない」といってPR文作成を苦痛に感じる人もいる。 自分を売り込めなければ、当然自分を買ってもらうのは難しい。分かっているのに書けない自分に就労への不安が増したり、度重なる不採用の連絡により、自己PRへの意欲が低迷してしまうケースもある。 話を聞いていると、自己PRに際して、人よりもすごい点、人よりも優れた点がないとアピールできないと思っていることが多くある。採用という場面であるから、アピールとなるような言い回しでなければならないことは確かだが、ただ、人よりもずば抜けてすごい何かを書かなければと思うあまり、「何もない↓書けない」という図式に陥ってしまうことがあるようだ。 自己PRで伝えることは、必ずしも人よりずば抜けて素晴らしい点や、とんでもなく珍しい経験である必要はない。自分の良さとは「誰かよりも」良い悪いと比較するものではないからである。 それぞれの人が、社会の中で役立たせ使える何らかの力を持っており、それがまさに自己PRの素材である。他人との比較のみに陥らず、自分の良さを知ることで自分に肌なじみし、相手も納得する自己PRを作ることができるだろう。「誰かよりも」ではなく「自分らしさ」を自分の視点でアピールすることが大事だ。 人よりも優れていないとだめだ、という考えは、社会に出て働いている人にも多く見受けられる。学生時代は見えやすい尺度で頑張りが認められたのに対し、気配りや実行力、愛嬌(あいきょう)、人を動かす力など、社会に出るといきなり尺度が多様化する。自分のよりどころとしてきたものが絶対評価基準ではなくなることで、自分を保つのが難しくなる。 「同期よりずっと優れていないと意味がない」とか「誰よりもできていないとだめだ」という不安や焦りから、社会に出て早期に心の健康を崩し、会社を去る若者もいる。自分と他者との比較の渦に巻き込まれると、自分そのものの良さが埋もれて分からなくなっていく。 まだまだスーツ姿で就職活動をしている学生を見かける。転職相談の若者も、額に汗して相談にやって来る。とくに正社員を渇望する若者たちは、企業から「一緒に働ける人物か」を鋭い目で吟味される。 彼らが自分になじむ言葉で魅力を十分表現できるように、そしてこの暑い夏を乗り切り、希望の企業への切符を手に入れられるように、精いっぱい応援したい。 (上毛新聞 2010年7月24日掲載) |