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NPO法人こころの応援団代表  千代田 すみ子(みなかみ町猿ケ京温泉)



【略歴】東京都生まれ。特養老人ホーム勤務や農業を経験。新潟県中越地震でのボランティア活動などを経て、2005年、本県に移住。心の病のある人の支援活動に取り組む。


悩みからの脱出


◎時間と周囲の理解必要




 悩みのほとんどは「時間」と「周囲の人の理解」が解決へと導いてくれるのかもしれません。

 心に病を抱える方々は、特に不安や苦しさを強く感じ、このまま一生続くのではないかと心配し、絶望すら覚えるようです。

 そんな時、周りから「がんばって」ではなく「よくがんばってきたね」「よく耐えてきたね」と過去形で言われたとしたらどうでしょう。

 きっとつらく長い時間が急激に過去へと変化し、自分を分かってくれる人の存在に気づき、がんばってきた自分自身を褒めてあげられるかもしれません。そして、自信へとつながるかもしれません。

 これは、当事者だけでなく、家族も同じです。家族は当事者が発病して以来、ずっと当事者と同じようにつらい思いをしてきています。ですから、時間が解決するなんてことは信じられないと言われることでしょう。

 なぜなら、永遠にこの暗闇から抜け出せないと感じてこられているはずだからです。

 ですが、この家族にも周囲に理解者がいたとすれば、その気持ちは少しだけ楽になり、経過した時間が解決へと一歩進ませてくれていることに気がつくでしょう。

 一生懸命尽くしても、誰にも褒められず、家族だから当然と自分でも思い込み、自分自身が疲れ果てるまで病気の当事者と向き合い、苦しんできたはずです。「長い間よくがんばってきたね」「疲れたでしょう。少しだけ休んでもいいんじゃない」などと褒められたり、ねぎらってもらえたら、どれほど救われることでしょう。

 そして、長い時間を振り返り、当事者の発病当時を冷静に思い出し、現在がそのころに比べてほんの少しだけでも前に進んでいることに気がつくはずです。

 この私自身も悩み苦しんだ時に、こころの応援団の仲間が愚痴を聴いてくれたり、ねぎらってくれたりしたことで、時間の経過と理解してくれる仲間を感じ、失った自信を取り戻した経験があります。

 ですから、私も「時間」と「周囲の理解」の双方が悩みを解決するために大切なのだと実感したひとりなのです。

 悩んだり、不安に感じている時は、この悩みが解決するなんて思えないでしょうが、時間は必ず経過します。そして、周囲の理解者も必ずいます。双方を得るためには待つことが必要なのでしょう。

 今、悩んで苦しい思いをしている方、もうしばらく待ってみてください。必ずあなたを理解してくれる方が現れるはずです。

 そして、その時苦しさを耐えてきた自分をその人と一緒に褒めてあげてください。








(上毛新聞 2010年7月17日掲載)