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◎対策に優秀な行政官を 野生鳥獣による農林業への被害対策では、被害農家と行政と捕獲従事者の三者が協力しあう必要があり、おのおのが意識改革をして取り組む必要があると考えています。前回(5月10日付)では、まずは被害農家自身が受益者として自ら被害防除を行う必要があると書きました。被害が発生する背景には、人任せの被害防除ではどうにもならいことを自覚している農家も増えてきています。そのような農家では、電気柵の管理もサルの追い払いも、未収穫物や廃棄した農作物の管理などもしっかりとやられています。 しかしながら、押し寄せる野生鳥獣の勢いを一軒の農家の努力で防ぎきれるものではありません。集落が一体となって、取り組むことが必要になります。そのような集落組織を効率的に編成することが大事であり、そのコーディネートができるのは行政官だと思います。農業改良普及員という立場で野生鳥獣の被害対策に従事されている人や市町村の鳥獣被害対策の担当者が自ら狩猟免許を取得して対応されている事例が群馬にはあります。特に新里町での取り組みは他の地域にも応用できるものだと思っています。鳥獣被害対策の専門家が行政にいることも重要ですが、ちょっとした取り組みが、鳥獣被害に弱かった集落を強い集落へと変えることができることは現実的な対応だと思います。野生鳥獣の逆襲という危機的な事態に対して、、「おれがやらずに誰がやるのか」という気概をもった行政官がいることで、危機を最小限の被害で乗り越えることができるのです。 戦後、日本の行政システムは優秀な人材を抱え、高度経済成長を成し遂げて今日の繁栄を築きました。その一方で、公害や自然破壊という負の事象も存在してきましたが、決して手をこまねいていたわけではありません。人材はいるのです。ただ問題なのは、前例がないとか、それはうちの課の仕事ではないというセクショナリズムや縦割り行政と呼ばれるような部分にあります。やる気や能力があっても、それを活いかせない仕組みに問題があるのです。 中国戦国時代の勝者曹操は「平時の能吏、乱世の英雄」と言われていました。平時には優秀な行政官であり、かつ乱世においては英雄であるという一種スーパーマンのようにも思えますが、野生鳥獣による農作物への被害の拡大という危機的な現状において必要なのは強いリーダーシップをもった行政官だと思います。そのような行政官をたくさん知っていますが、どうしても組織の中で埋もれてしまうのが日本社会なのかも知れません。このような優秀な人材をどう使っていくかは、市町村長や県知事など、住民によって選ばれる人の英断が求められます。結局は、住民一人一人の意識が重要なのです。 (上毛新聞 2010年7月10日掲載) |