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弁護士  橋爪 健(高崎市江木町) 



【略歴】高崎高、中央大法学部卒。1999年度群馬弁護士会副会長。同弁護士会人権擁護委員会委員長などを務め、2010年度は刑事弁護センター委員長。



司法修習生給費制の廃止



◎法律家への道閉ざすな



 法律家をめざす人が減少している。法科大学院志願者は2006年度には7万人を超えていたが、09年度は2万人台となり、特に社会人を含めた法学部生以外の志願者が急減している。なぜか。割に合わないリスクが高すぎるからである。

 現在の法曹養成制度は原則として法科大学院を卒業しなければ受験資格を与えられない。法科大学院はお金がかかる。学費は国立で年間約110万円、私立で120万~180万円といわれており、2年または3年の就学期間中の経費は生活費を含めれば相当な金額となる。

 日弁連のアンケートによれば、司法修習生の約半数が法科大学院では奨学金を利用しており、平均約320万円、最高で1200万円の奨学金債務を負っているそうである。

 司法修習生とは、司法試験に合格した後、全国各地に派遣されて1年間裁判、検察、弁護の実習を受ける法律家の卵のことだ。多額の奨学金債務を負って法科大学院を卒業しても、新司法試験の合格率は08年が33%、09年が27・6%と低迷したままである。

 当初の法科大学院卒業者の7~8割が合格できるとの触れ込みは何だったのか。さらに卒業後5年間で3回しか受験資格はない。新司法試験に合格して司法修習生になっても苦難は続く。以前より司法試験合格者を大幅に増やしたことで需給ギャップが生じ、年を追うごとに深刻な就職難が発生しているのだ。

 年月をかけ多額の費用を投じ、負債を背負っても法律家になれない。法律家の資格を得ても肝心の就職先がない。将来の展望が開けない。となれば魅力は消え失せ、志望者が減るのは当然といえる。

 この事態に追い打ちをかけるのが今年11月から始まる制度の切り替えである。司法修習生に対する給与支給を廃止し、希望者に給与分を貸与するというのだ。給費制から貸与制への移行は04年の裁判所法の改正で決まっていた。受益者負担の原則や国の財政難が理由だそうである。

 ところが、この6年間に法曹養成を巡る状況は既に述べたように当初の想定と大幅な乖離(かいり)が生じている。このまま給費制が廃止されれば普通の司法修習生はさらに約300万円の借金を国に背負うことになる。

 司法修習生は1年間の実習に専念することを義務づけられており、この間副業やアルバイトなどはできない。給費制の廃止はお金がなければ法律家になれないおかしな制度に直結する。

 前記裁判所法の改正では衆参両院で「経済的事情から法曹への道を断念する事態を招くことがないように…関係機関と十分な協議を行うこと」との附帯決議がなされている。この附帯決議が実行されるべきと思う。









(上毛新聞 2010年7月8日掲載)