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日本銀行前橋支店長  柴山 卓也(前橋市大手町) 



【略歴】埼玉県生まれ。一橋大卒。日本銀行では、米国ブルッキングス研究所客員研究員、総務人事局、金融機構局などを経験。一昨年5月、前橋支店長として着任。



お札に関するミニ知識



◎高水準の偽造防止技術



 「日本銀行の最も根源的な仕事は、『お金』を発行して、その『お金』を国民の皆さんが安心して、かつ便利に使えるような環境を整えること」(白川総裁)です。このためにさまざまな仕事があります。今回は、読者の皆様にとって最も身近な、日本銀行券「お札」のミニ知識をご紹介します。

 本年3月末現在、お札の流通残高は77兆円、129億枚です。これを積み上げると、赤城山の約700倍になります。お札の流通残高を経済規模(名目GDP)で割ると、米国が約6%である一方、日本は約16%です。日本人は「お札好き」と言えそうです。

 そこで、重要な課題は、国民の皆さん一人ひとりが安心してお札を受け取ることができるようにすることです。このためには偽札の混入を徹底的に防がなければなりません。ちなみに、偽札を作成したり使用すると、たとえ出来心でも、「無期または3年以上の懲役」が科されます。

 日本銀行は偽造防止のため(1)お札のきれいさを保つこと(2)お札のハイテク化(3)広報(4)関係機関との協力等に取り組んでいます。

 例えば、世の中で流通するお札をきれいな状態に保つため、日本銀行に戻ってきたお札を1枚残らず検査します。偽札はないか、再び使用できるか(破れていないか、汚れ過ぎていないか等)を調べます。再使用に耐えないお札は細かく裁断します。金融機関には、再使用するお札と真新しいお札を併せて支払います。

 なお、裁断屑のリサイクルにも取り組んでいます。例えば、一部は、建材やトイレットペーパーなどの形で再生されています。また、偽造防止技術の研究を続けています。その成果は、お札の切り替え(改刷)時に盛り込みます。

 流通しているお札100万枚当たりの偽造券の枚数は、米国が100枚、ユーロは66枚、英国は268枚です。他方、日本は、0・29枚です。正に桁違いです。この背景には(1)お札に採用されている様々な偽造防止技術が高いレベルである(2)国民一人ひとりが偽札に目を光らせていることが強い抑止力となっている、といった事情があります。

 ところで、日本銀行前橋支店は店内見学会を随時受け付けています。お蔭様で、昨年度の参加人数は724人、前年度の約2倍に増えました。この一環として、春休みと夏休みには小中学生向けの親子見学会を開催しています。

 今夏は13回開催します。偽造防止技術の説明などのほか、「にちぎんマン・レディ」体験を新たに企画しました。詳細はインターネットのウェブサイトに掲載済みです。応募は7月1日より、電話(電話027・225・1145)で受け付けます。







(上毛新聞 2010年7月1日掲載)