視点 オピニオン21 |
■raijinトップ ■上毛新聞ニュース |
. | |
|
|
◎想像力を働かせ点検を 突風の中で、ダウンバーストと竜巻は、発達した積乱雲から発生します。ダウンバーストは、積乱雲からの冷たい空気が滝のように地上に吹き降りて衝突し、周囲に勢いよく吹き出すことで発生します。竜巻は、ろうと状の雲を伴い地上の空気を吸い上げながら移動します。 この数年、群馬県の東毛地方では、竜巻やダウンバーストによる突風被害が発生しています。気象台では、突風被害の報告を受けると、今後の防災活動に生かすため、市町村の防災担当者や市民の協力を得て、飛散物の状況、目撃証言、提供された写真から突風の原因と強さを推定します。 2008年7月25日には、太田市、みどり市、桐生市で、突風により、屋根や瓦の飛散、倒木などの被害を受けました。現地調査の結果、原因はダウンバースト。強さは藤田スケール(竜巻を強度別にF0からF5の6段階に分類)でF1でした。09年7月27日には、館林市でF1~F2の竜巻が市街地を直撃し、被害域は幅約50メートル、長さ6・5キロメートルで、重軽傷者21人、建物は全半壊合わせて419棟、車両は全損4台を含め33台が被害を受けました。 近年、突風の原因や強さの調査と積乱雲の観測の積み重ねにより、竜巻は回転性を持つ積乱雲からの発生が多いことがわかってきました。このような積乱雲をメソサイクロンといいます。気象庁では、気象レーダーに固形粒子(雨粒や雪)の動きから積乱雲の中の気流系を観測する機能を増強し、今年の5月27日から、竜巻注意情報に加えて、突風や積乱雲が発生する可能性が高い範囲を10分ごとに1時間先まで予測する気象情報として、竜巻発生確度ナウキャストと雷ナウキャストを開始しました。 竜巻や積乱雲の知識を背景に気象情報は充実してきましたが、現時点では、館林の竜巻のように積乱雲の成長が早い場合には、竜巻注意情報が間に合わないことがあります。気象災害から逃れることはなかなかできませんが、自分の身を守り被害をできるだけ少なくすることでは、可能な部分が多いと思います。 今年1月15、16日に県庁で開かれた県危機管理フェアでは、多くの人が竜巻のパネルや竜巻実験装置を見学しました。突風から身を守るためには、気象庁と市町村の防災担当者等との連携強化に加え、このような広報活動が継続され、たくさんの人が参加することを望みます。本物の竜巻が接近すると、ゴーという音が聞こえますが、とっさに適切な行動をとることは、容易ではありません。日ごろから、どこに避難するか、どんな物が飛んで来るかなど、想像力を働かせて、家の内外を点検することは自分と家族を守る第一歩ではないでしょうか。 (上毛新聞 2010年6月23日掲載) |