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県立県民健康科学大学長  土井 邦雄(前橋市岩神町) 



【略歴】東京都生まれ。早稲田大理工学部卒。1969年からシカゴ大放射線科に勤務し、同大教授を経て同大名誉教授。昨年4月から現職。



心配な日本の将来



◎対立意見も聞く姿勢を




 40年のアメリカ滞在の後、昨年4月から、私は健康科学大学の学長として着任し、本学を大きく飛躍させ、日本一流の、そして世界にも通用する大学にしたいと考え、いろいろな提案をしています。

 長い間日本を離れていたせいか、日本のテレビ番組などを見ていると、気になることがあります。それは、日本の評論家などの意見には、一方的な批判が多いと思えるのです。両側の意見を持つ複数の評論家が登場して、異なる意見が表明されていないように思えます。多くのことには、賛成と反対や、利点と欠点などの両面があります。そこで、一般には、両側の意見を理解してから、最終決定するのが良いと思います。しかし、日本のテレビでは、多くの場合に、一方的な批判だけに集中しているように思えます。これの危険性は、良いことがあっても、それが見えなくなる可能性があることです。そのため、否定的で破壊的な力は強くなるのですが、建設的な面が弱くなります。そこで、老婆心ながら、日本の将来を心配しています。

 アメリカでは、一般に、対立する両側の立場の複数の評論家たちが、意見を戦わせ、後は「聴衆の皆さんがそれぞれ決めてください」とのスタンスをとります。重要な案件については、両側にそれぞれ2人、あるいは3人ずつ選ばれることもあります。このような番組では、しばしば、激しく沸騰する議論や鋭い対決もあり、「黙らなければ、あなたを番組からはずす」とまで司会者が脅迫する場合もあります。

 私は政治的に中立で、どの政党も支持していませんが、最近の民主党に対する批判は気になります。民主党は、今までの日本になかった多くの良いことをしているように思えるのですが、良いことを称賛する声がほとんど聞かれません。これは、不公平ではないでしょうか。もし、民主党が急速に影響力を失えば、日本にとってはマイナスかもしれません。一方、自民党は、政権から失脚したのですが、現在の日本の繁栄を築いたのは、長期にわたる安定政権のおかげだと思います。もし、自民党が崩壊するようなことになれば、これも、日本にとってマイナスかもしれません。しかし、自民党を励まし称賛する声は、ほとんど聞かれません。

 沖縄の基地問題は、日本の重要な問題です。しかし、ニュースを見ると、沖縄の方々の意見が圧倒的で、多くの日本人は、同情的な意見を持っていると思います。しかし、日本には、沖縄以外にも、多数の基地があり、その近所の方々は、沖縄と同様の印象を持っていると思われます。そこで、沖縄の基地問題を、日本全体の基地問題ととらえることが必要ではないでしょうか。しかし、そのような報道は、ほとんどありません。






(上毛新聞 2010年6月10日掲載)