視点 オピニオン21 |
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◎創造的な遊び取り入れ 「なんの本がいいかな」「字ばっかりなの、苦手なんだ」。本校図書委員会制作の冊子『夏の推薦図書』を書くために、学校図書館の本棚の前で選ぶ生徒の会話だ。 実際、図書委員といえども、本を読むのがおっくうという生徒もいる。そんな生徒を読書に近づけようと、学校図書館もさまざまな取り組みを行う。生徒の視線で推薦するこの本の紹介もそうだ。そういった取り組みで有効な手法のひとつに「読書へのアニマシオン」(以下アニマシオン)がある。 それは、スペインのモンセラット・サルト氏らが考案した読書教育法である。彼女は「子どもが本を読みたがらないのは、本の読み方を知らないからではないか」そうであるなら、「読み方を身に付けさせればいい」と考えた。それは、「読め、読め」というのでなく、創造的な遊びを取り入れることで読書の喜びに気づかせ読む力を引き出すというものである。 幼児期から10代後半まで、その発達段階に応じて、ねらい(たとえば批判力、分析力)をもった「作戦」と呼ばれる方法で、さまざまな読み方を学ばせる。知的な遊びの形をとるので楽しくなる。どんなことをするのかワクワクする。それが「アニマ(魂・生命)」を生き生きさせる。 たとえば、中高生向けのアニマシオン、作戦34「彼を弁護します」では、子どもたちが登場人物役と読者役に分かれ、読者役の子どもたちが登場人物役の子どもに、その本の中でとった行動や態度、説明をしてほしいことなど質問する。質問された子どもは登場人物の立場で答える。推測でなく文章中の論拠になる部分を示して答えるなど、論理的な思考を育て、解釈する力と表現する力を狙う。 アニマシオンをしてみると、参加者は「絵をもっとよく見ようと思った」「登場人物のことを気をつけて読みたい」「他のシリーズも読みたくなった」「みんなで考えるからひとりで考えるより詳しく分かって楽しかった」と言う。知らず知らずのうちに本の読み方が変わってくる。ひとりでじっくり考える時間と他者の意見に耳を傾ける活動で、発見があり集団の学びにつながる。 「作戦」は75あり、発達に合わせ、別な読み方につなぎながら計画的に行うことが望ましい。ここ数年、全国各地で年間計画の下、学校全体で長期的継続的にアニマシオンに取り組む様子を聞き、喜ばしいと思う。 スペインではアニマシオンのために、出版社が安価で本を提供していた。フランスでは、子どもを育てる指導者(読書を含む社会文化アニマシオン)を国策として養成していた。自治体も学校も書店も出版社も新聞社も図書館も協力して読書教育をしていた。今年は「国民読書年」、社会全体で真に読書を考える年だ。 (上毛新聞 2010年5月31日掲載) |