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◎情景豊かに仕立て直し 前回のこの欄(3月22日付)でご紹介した馬庭サルビア街道はわずか350メートル、おそらく日本で一番短い“街道”だと思うが、では一番長い“街道”をご紹介しよう。 “日本風景街道”という国の事業で、全長なんと1万2600キロメートル、札幌~福岡間を3往復もする長さの街道などあろうはずもないのだが、計算上はこうなる。 3年前に登録の受け付けがはじまったところ、各地の住民グループ、NPO法人、市町村などが一気に反応し、あっという間に増え続けて現在116カ所が参加する人気事業になっている。その116カ所の対象地域内の道路の延長を足し上げると、先述の途方もない長さになるのだが、それでも日本中の全道路の総延長115万キロの1%ちょっとというと納得いただける数字だろう。 北海道富良野のラベンダーの道、和歌山の熊野古道、阿蘇のやまなみハイウエーなど、一度は訪ねてみたい風景の道や歴史街道がほとんど網羅されている。 群馬県からは“浅間・白根・志賀さわやか街道”が関東地方の第1号として登録され、長野県側の軽井沢から入って長野原~嬬恋~六合~草津を経て志賀高原へと至る高原の道200キロについて美しい道づくり活動が始まっているが、皆さんあまりご存じないのではないだろうか。 国の戦略会議の委員として、またさわやか街道事業の関係者の一人としても、実は、それが悩みである。 車に占領される前の道路は子供の遊び場であり、歴史や文化の舞台であり、人々をつなぐ交流の場であったことを思い、もう少し情景豊かな道へ仕立て直し、合わせて観光資源として生かそうと企画された事業だけに、主役はあくまでも地域の住民で、行政はお金は出しても口は出さないというのが大原則。 前政権からの引き継ぎながら、今の政権もしっかり支援してくれるものと確信していたのだが、これが当てはずれになっている。 沿道の雑草を刈り、伸び放題、倒れっ放しの樹木を片付け、電柱やカンバンを整理し、ポイントごとに説明板やベンチを作っていこうという計画はなかなか進まず、“ここがさわやか街道”という立てカンバンさえ作れないままだった。 3年目の今年ようやく群馬県当局が予算を組んでくれ、近々、沿道の4カ所にカンバンが立つことになったが、鳴り物入りでスタートした国家的プロジェクトというのに、頼りになるのは、以前からあった花作りの会のお年寄りの活動で、風景作り、地域連携の原動力が結局花いっぱい運動であることを、ここでも改めて思い知らされている。 さてそのサルビア街道では今年分の700本の苗の植え付けが終わり、夏の到来を待っている。 (上毛新聞 2010年5月29日掲載) |