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◎農家自身が意識改革を 群馬県内の野生鳥獣による農林業への被害は、年間約4億円にもなっています。被害を受けている人にしてみれば、加害鳥獣を根絶してほしいと思うでしょうが、そのような対応は許されません。 現在の野生鳥獣の被害対策には、被害防除・生息地管理・個体数調整という三つの柱で取り組むことが、求められています。被害防除は、電気柵で畑を囲って野生鳥獣が立ち入れないようにするなどの対策を言います。生息地管理は、野生鳥獣が本来生息する場所の環境を整え農地等へ野生鳥獣が出没しないように管理することを言います。個体数調整は、増えすぎた野生鳥獣を間引くことで被害を防ぐことを言います。 このような視点から被害対策を行う場合には、被害農家・行政・捕獲従事者の三者が協力しあう必要がありますが、これまでその対策がうまく進んでいない現実を踏まえて、今こそ三者が意識改革をして取り組む必要があります。 これまでは、農作物等に被害が発生すると、その加害獣を捕獲する有害鳥獣捕獲が行われてきましたが、被害防除が行われていない段階での有害鳥獣捕獲はできないということです。生息地管理では、広い面積に対して長い時間をかけなければなりませんが、まずは被害農家が自助努力で野生鳥獣の侵入を防ぐ被害防除対策が行われなければなりません。そのような努力をしたにもかかわらず、被害を減らすために個体数を減らす必要がある時に有害鳥獣捕獲と呼ばれる個体数調整が行われることになります。これまで、この有害鳥獣捕獲は猟友会が行ってきました。 しかし、猟友会員の高齢化と減少は急速に進んでおり、そのような事業に従事できる人がいなくなっています。最近では、被害農家の方が自ら狩猟免許を取得して、野生鳥獣の捕獲をしようとする事例も増えていますが、焼け石に水といった感が否めません。わなを仕掛ければすぐにでも野生鳥獣を捕獲できると考えがちですが、相手も必死で生きています。そう簡単にはわなにかかりません。10個のわなを10日間仕掛けると、延べ100個のわなを仕掛けたことになります。これで1頭捕れたら、わなを設置するのがうまい人だと言えるでしょう。笑い話のようですが、イノシシを捕らえようとして、1頭も捕れなかったということは日常茶飯事なのです。 結局、被害農家の人にしてみれば役所に言ってもどうにもならない。猟友会に任せても少しも被害が減らないという気持ちになってしまいます。しかし、まずは被害農家自身が被害防除を行う必要があるのです。野生鳥獣による被害防止対策にかかる費用は、受益者である農家が負担する義務があるのです。 (上毛新聞 2010年5月10日掲載) |