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県立県民健康科学大学長  土井 邦雄(前橋市岩神町) 



【略歴】東京都生まれ。早稲田大理工学部卒。1969年からシカゴ大放射線科に勤務し、同大教授を経て同大名誉教授。昨年4月から現職。



大変化の時代の大学(2)



◎原動力は同窓生の支援



 昨年11月18日付本欄で述べましたが、経済環境、少子高齢化、政治改革、大学改革などのいろいろな観点から、現在は大変化の時代と考えられます。私は、県立県民健康科学大学を大きく飛躍させ、日本一流の、そして世界にも通用する大学にしたいと考えています。そのためには、同窓生による大学の支援が、一つの鍵を握っていると考えています。

 アメリカでは、同窓生による大学の支援は極めて活発で、その規模は想像以上に大きいのですが、日本ではほとんど知られていないのが現状だと思います。例えば、シカゴ大学、スタンフォード大学、ハーバード大学などの一流大学が多くの業績を上げ、著名であるのは同窓会がしっかりしているからだともいえます。

 参考までに、シカゴ大学では、世界最高の85名のノーベル賞受賞者を輩出しています。社会で活躍している同窓生が母校を支援する理由は、自分を育ててくれた母校に感謝する気持ちを示すことと、さらに、次の世代を担う若者たちを助けて将来への希望と熱意を表現することだと思います。

 大学の施設を改善・新築したり、学生や教員の活動を支援するには、資金が必要です。しかし、大学の通常の予算や科学研究費などの外部資金だけでは、十分ではありません。同窓会を主とする活動からの資金は、最も融通性があり、大学にとっては極めて強力で有効な支援になります。

 具体的には、毎年、年度末に、同窓生たちに資金援助の要請の手紙などの丁寧な案内が送られます。そこで、多くの同窓生は毎年、ある程度の寄付をすることになります。その寄付の金額は大体、忘年会費用程度が多いと思われます。もちろんこれは強制的ではなく、各人の判断で実行されます。しかし、これが継続されると驚くほどの大きな力になり、大学を大きく援助することが可能になります。例えば、4000人の同窓生が毎年1万円寄付したと仮定すると、年間4000万円になり、5年間で2億円です。同窓生が10万人の大学では50億円になります。そこで、大きな計画が実現できるのです。さらに、大きな成功をした同窓生は、時折、100億円にもなる巨額の寄付をすることがあります。これが、アメリカの多くの大学の実力の原動力となっています。

 同窓生が、母校を思う気持ちは、日本でも、アメリカでも同じだと思います。同窓生からの支援によって、大学は、大きく飛躍することが可能になります。母校を強力に支援することは、大きな社会的貢献をすることになります。前橋市と群馬県にとっては、大きな地域貢献の利益を受けることになります。日本の大学でも、このように継続する長期的支援を実現できると信じます。






(上毛新聞 2010年5月7日掲載)