視点 オピニオン21 |
■raijinトップ ■上毛新聞ニュース |
. | |
|
|
◎文化遺産として保存を 刀剣(日本刀)は、世界に誇る鉄の文化遺産といわれています。 砂鉄から精製された玉鋼(たまはがね)を、何度も折り返して鍛錬(たんれん)し、焼入れした刀身には、研磨によって、とても美しい地肌と、刃文(はもん)が現れます。そして、適度に反った姿も、時代の特色を現し、美術品として鑑賞されています。 また、その神秘性から、古来、信仰の対象とされたり、武士道精神のよりどころとなってきました。一方、刀剣は武器ですから、終戦により、武装解除の対象となりました。しかし、当時の有志の方々の必死の嘆願で、占領軍の幹部も、武士道や、日本刀の美を理解し、美術的、歴史的に価値あるものについては、所持や譲渡が許されるようになりました。 この制度は法制化され、私たち登録審査委員は、その審査を担当しています。 さて、占領軍から所持許可が出たことから、全国組織として、刀剣類の保存のため設立されたのが「財団法人日本美術刀剣保存協会」です。当初は、台東区上野にある東京国立博物館に本部が置かれていました。 その後、代々木の現在地に移転しました。事業としては、刀剣類の真偽鑑定、作刀・研磨・外装・白鞘(さや)その他の技術保存、玉鋼の生産、新作刀・研磨コンクール、機関誌『刀剣美術』発刊、同所にある刀剣博物館で、名刀の常設展示などを行っています。 会長は、元首相の橋本龍太郎氏亡き後、佐々淳行氏が就き、会員は全国に6000人あまりいます。また、全国に支部があり、私も長いこと高崎支部に所属しています。同支部は、長年の間、ほぼ隔月に鑑賞会を開催し、鑑識眼の向上と、会員の親睦(しんぼく)を図ってきました。これは、5振りの刀剣の銘を隠しておき、その作者を当てるという競技です。江戸時代、非番の武士たちが集まって、目利きを学んだという、故事を踏襲しているのです。 そして、毎年11月ごろに、「高崎市文化祭」に協賛して、市総合文化センターで「名刀展」を開催し、大勢の来場者でにぎわいます。新規会員も受け付けます(詳細は当日、会場で)。 また刀剣は、日常の言葉として「一刀両断」「目抜き通り」「焼きが鈍(なま)る」(広辞苑)、相撲の「土俵入りの太刀」「行司の脇指(わきざし)」、儀礼の「花嫁の懐刀(かいけん)」「死者の枕刀」などがあり、意外に私たちの生活の中に生きているのです。 このように、私たち日本人にとって、貴重な文化遺産といえる刀剣類、ほっておけば、やがて、錆びて朽ち果ててしまいます。もし、ご自宅で見つけた時は、怖がらずに、すぐ警察に届け、きちんと登録を受けて手入れをし、たいせつに保存していただきたいと思います。 (上毛新聞 2010年5月2日掲載) |