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第一高等学院北関東・東北・北海道エリア長  篠原 裕(前橋市関根町) 



【略歴】渋川市出身。第一高等学院高崎校長を経て、今春から現職。不登校生の支援や高卒サポート、高卒認定試験の指導を行う。県ニート対策会議委員も務めた。



七五三現象なくすには



◎働きがいで仕事に希望



 先日、弊社の入社式に出席し、緊張しながら初心を宣誓する新入社員たちに、私自身もすがすがしい気持ちになった。2010年度の新入社員は「ETC」型であるという。日本生産性本部によると、厳しい就職活動をくぐり抜けた10年度の新入社員は、携帯電話などITに詳しく情報交換は積極的で、物事を効率よく進めるスマートさはあるが、人とのコミュニケーションが不足気味らしい。

 入社3年目までに「大卒者が3割、高卒者が5割、中卒者が7割退職する」いわゆる七五三現象は続いている。相当な費用と労力をかけて採用した若者たちにすぐに辞められては、企業としては死活問題である。七五三現象の原因としては、2点挙げられることが多い。一つは、我慢できない若者にあるという「最近の若者は」論。もう一つは、本人の適性に合っていないという「ミスマッチ」論である。私も転職をしている身なので大それたことは言えないが、中途採用面接で感じるのは、本人の適性に合っていなかったのではなく、本人が早い段階でそう思い込んでしまっていることが多いことだ。若いうちに自分の天職を探しあてることは容易ではないだろうに。

 私は、突き詰めていくと「なぜ、この会社で働いているのか」ということに行き着くと考える。振り返ると、私は、生徒や保護者など顧客の期待を自分自身の意欲に変え、会社の理念に自分の思いを重ね、より強い思いにして、働いてきたと思う。指示されるがままの仕事ではなく、会社の理念や方針に自らの思いを反映させ、自らの人生に活(い)かしていくような姿勢で取り組むことができたなら、きっと、やるべき仕事が好きになり、新たな夢が生まれ、希望が見えてくるはずだ。

 有名なレンガ職人の話に、レンガ職人に「何をしているのですか」と尋ねると、ある職人は、「棟梁(とうりょう)に指示されてレンガを積んでいます」と答え、ある職人は「家族が幸せに暮らせる家を建てています」と答える。前者は自分が何のために仕事をしているのかという意識がなく、モチベーションの低い様子が見える。一方、後者はやりがいを持って仕事に打ち込み、技術も高い様子が浮かんでくる。

 弊社で言うならば、顧客への貢献、社会への貢献、社員への貢献を経営理念として、社会で活躍できる人づくりを目的とする、かけがえのない仕事に携わっている。また、仕事を通じて私が実感した働きがいを社員に伝え、社員の心に灯をともすことが、私の一番の職責であるととらえている。

 部下を飲みに誘っても最近の若者はついてこないと聞くが、ETC型のコミュニケーション不足の社員なら、なおさらのこと、「君は将来、この会社で何をしたいのか」を問いかけて、夢のある会話を増やしていきたいものだ。








(上毛新聞 2010年4月23日掲載)