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◎利益は強化・施設費に 今回は、収支構成からJクラブを見てみたいと思います。 Jクラブは多様なものを提供・販売して収入を得ています。主たる収入項目としては、入場料、スポンサー、グッズ販売、サッカースクール、ファンクラブ、選手移籍金、放映権、順位による賞金などがあります。その収入源に対しそれぞれ取引先が変わり、その都度クラブ側はさまざまな対応をしなければなりません。多様な相手先に多様なものを販売しているのです。 ではその逆にある支出はどうでしょう。選手・スタッフの人件費に始まり、競技場使用料・警備費・運営人件費・入場券販売費等の試合運営経費、チーム移動費・合宿費・グラウンド使用料・用具費等のチーム運営費、グッズ製作にかかわるグッズ原価、フロントスタッフ人件費・物件費等の一般管理費がその主たる項目であります。この支出のボリュームは、チームが強くなり、クラブが大きくなれば必然的に膨らみ、収入に対する実質的な固定費の割合はどのクラブも非常に大きくなる傾向にあります。 また、Jクラブの特異なキャッシュフローとして、支出予算の作成が収入予算の作成に先行することが挙げられます。Jクラブは、来期の選手補強とスポンサー営業が同時進行し、スポンサー収入が確定する前に、大きな割合を占める選手・スタッフ人件費を先に確定してしまうという特性があります。また、試合数は決定しており、必要経費は削減することはできません。コスト削減余地は小さく、実質的な支出固定費の割合が高いのが特徴です。そこに、予期せぬ収入不足、甘い収入予算により赤字になりやすい特性があるものと考えます。そこでどこかが狂い始めると、収入減↓チーム人件費削減↓チームの弱体化↓試合に勝てない↓入場者減↓メディア露出減↓スポンサー減↓収入減という「負のスパイラル」へ、直ちに巻き込まれてしまいます。もちろん各クラブは、このスパイラルに足をすくわれることなく、数多くの利害関係者との関係をうまくコーディネートしながら発展を目指さなければなりません。 もう一つ、Jクラブの特異性として挙げられるのは、第一の事業目的は、利益ではなくサッカー興行そのものであるということです。大きな利益を残すことを目的とせず、利益はさらなる強いチームを作るための強化費・施設費として充てられる傾向があるということです。それは、強くて魅力あるチームを作り、クラブそのものが街において必要不可欠な存在になること。街のシンボルとして存在し、地域の共有財産として認知されることをJクラブは目的としているからです。もちろん、『ザスパ草津』も同様です。 (上毛新聞 2010年4月9日掲載) |