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◎子どもの視点を入れて 「ディック・ブルーナーは、マティスとピカソの影響を受けてミッフィーを生み出したんですって。生徒にイメージがわくように、その絵を見せてあげたいんです。教科書に“vivid & simple(鮮やかで単純)”と載っています」と、学校図書館にやってきたのは、英語教諭だ。調べてみると、南フランスのヴァンス礼拝堂(晩年マティスが手がけた)の白い壁に黒い線で描かれた絵、そして青と緑と黄色のステンドグラスの窓に感銘を受けたのだった。作品(写真)を見て、生徒も得心がいったことだろう。 また別の教諭は、「大航海時代、ムスリム商人(イスラム教徒)が巡った港が、『シンドバッドの冒険』で立ち寄った港と一致するそうなんだ。授業で使えると思うんだけど、本当かどうか調べたいんだ」と。2人で、数冊の『シンドバッドの冒険』で検証を始めた。さらに、授業者は、生徒の関心、読解力、根気強さなどを考慮してメディア(本・ビデオなど)を選択する。 このように、生徒に身に付けさせたい力を考えて、授業者は計画を立てる。学校司書は、授業者の意図をくんで、「その目的なら、この本とこの本はいかがでしょう」など、メディアを提案する。必要に応じ、著作権のこと、資料の使い方など、専門的な情報を提供する。共に働くうちに、授業者の頭の中には、授業のデザインが形成されていく。 この過程で、学校図書館側は、必要に応じて公共図書館や博物館などと連携する。私たち、授業者と学校司書、そして関係機関も、それぞれの専門性を発揮して、よりよい授業をデザインしていくチームといえる。 ところで、多くの授業は、先生が知を授けるタイプが多い。「教える」・「解説する」ことはとても大切だし、答えが一つしかないことを、正解か不正解か問うことも知識の定着に必要だろう。しかし、それは、授ける視点。それだけでは、学校という場だけの知識にならないか。 そこで、チームの一員として、子どもの視点を授業に入れることを提案したい。これから、子どもたちは激動する社会に出なければならない。今、経済も資源も人も、世界規模で動いている。これからの子どもたちは、だれも今まで経験したことのない世界を生き抜かなくてはならないのだ。 学校図書館で見せる「なぜだろう?」は、彼らに意味のある問題だ。本の記載を見せて、自ら「気づき」や「発見」を「待つ」沈黙の時間。自由に発言できる雰囲気。友の発言に啓発され考える。彼らに意味のある問題だから、わかったことが自分のものとなるのではないか。そこには、子どもの視点で考える活動がたくさんある。授業のデザインに、子どもの視点を入れたら、教育の可能性が、もっと広がると思う。 (上毛新聞 2010年4月4日掲載) |