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県建設業協会会長  青柳 剛(沼田市西倉内町) 




【略歴】早稲田大大学院修了。前橋工業短大専任講師などを経て1981年に沼田土建入社。94年から同社社長。昨年5月、県建設業協会会長に。著書に「銀色万年筆」など。



建設業界が問われるもの



◎地域貢献と技術力を




 「人口減少、少子高齢化、財政赤字」。いつの時代でもそうだったが、ここにきてなお一層、建設業界のあり方そのものが問われる時代になった。

 そんな中、県建設業協会は昨年11月、「施工技術発表会」を開催した。県内全域にわたって業界独自で行う技術発表会は初めての試みである。どれだけ問題意識を持った参加者が集まるか気になるところだったが、当日は立ち見が出るほど、350人以上の参加者で会場はいっぱいになった。公共投資に対して厳しい目が向けられる中、社会資本整備を通して正面から「ものづくりの役割」に向き合う動きのひとつである。

 県内12支部から推薦されてきた土木工事12件と建築工事3件、合計15件の担当技術者が、パソコンの画面を通して会場のスクリーンにそれぞれの工事のポイントを映し出しながら発表した。交代時間を含めて10分間の持ち時間である。国、県、市町村のさまざまな発注機関の工事を品質、工法、近隣住民対策そして安全対策などと、それぞれ角度を変えた発表が行われた。発表手順と方法がある程度統一されたことにより、聞きやすい発表会となった。

 ところで、業界団体の役割は時代とともに変化する。さすがに最近は、「護送船団方式だった」という、業界団体をひとくくりにする指摘は聞くことがなくなった。同じ考えで、同じ行動をする、数の力頼みの団体としての役割は終わりを告げ、団体に入っているだけで団体としてのメリットを享受できるような生易しい時代ではなくなったのである。団体としての役割を明確にしながら、どういった行動をし、どういった考え方で動いているか、どういった人たちで運営されているか、活動の中身が明確に浮き彫りになることによって、団体としての存在意義が出てくるのである。

 厳しいマイナスの風が吹いているときこそ、団体としての活動の中身が問われてくる。戦後続いてきた成長産業だったときの役割といえば、マイナスのことを会員同士でお互いにけん制することぐらいでこと足りていた。今の時代、地方の建設業界が問われている中身は何かと要約すれば、「地域に貢献する役割」と社会資本整備を通して「いいものをつくる役割」に集約されていく。受益者である住民にとってプラスになることを会員同士で情報交換をしながらまねをし合っていくこと、それが業界団体の技術力の底上げとなる。

 初めての「施工技術発表会」。より良いものを正しく評価する人が増えてくればくるほど業界団体の価値は高まってくる。差別化されたブランドとしての建設業協会のあり方、見えてくる中身によってかたちづくられてくるのである。






(上毛新聞 2010年4月3日掲載)