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◎お互いを思いやる心で 1985年3月17日、イラクのサダム・フセイン大統領が「今から40時間後にイランの上空を飛ぶすべての飛行機を撃ち落とす」との声明を出しました。イラン・イラク戦争の最中で、当時イランに住んでいた日本人はテヘラン空港に行きましたが、どの飛行機も満席で、乗ることができず、空港にいた日本人はパニック状態になりました。その時、2機のトルコ航空機が到着し、日本人216人全員を乗せて成田に向かい、タイムリミットに間に合いました。 なぜトルコ航空機が来たのか。それには約100年前の出来事が関係してました。 1890(明治23)年9月16日の夜のことでした。トルコから明治天皇に親書を渡し、帰ることになったエルトゥールル号は、折からの台風にあおられて座礁し、約600人の乗組員が海に投げ出されました。その時に近くの和歌県串本町の人たちが、わが身を惜しまず救助をしたことで、69人が助かり、その後、手厚い看護を受けトルコに送還されました。 この話を聞いた人も多いと思いますが、トルコでは学校でもこのことを習うそうです。トルコの親日は、こんなことが背景にあるのです。 これを自分の身近な人に置き換えてみるとどうでしょう。私にはすてきな友達がいて、いつもその人たちに助けられています。その友達に何かあったら心配になりますし、できることなら助けてあげたいと思います。友達はアメリカ、ニュージーランド、ドイツ、インドネシア、スリランカ、バングラデシュなど海外にも多くいます。そして、トルコにもいます。 日本語教室に勉強に来ている人たちも、いろいろな国の人がいます。そんな人たちの国に、紛争があると心配になります。何もできませんが、せめて、気持ちが和らぐようにできないものかと思いながら話をします。 国によって習慣や規則は違いますが、その国の人でなくても、良いことと悪いことの区別はつきます。悪いことをする人はどの国にもいるし、良い人もたくさんいます。今まで教室に来た人たちのことを振り返ってみると、みんな良い人たちでした。ただ、日本では言葉が分からなくて日本人と意思疎通が図れず、なぜ怒られるのか分からなかった、というケースも多かったように思います。 そんな人たちとの関係を大切にしながら、これからも、教室で持ち寄りパーティーやスピーチ発表会などを開いて、日本人と外国人の交流の機会を設けたいと思っています。それが、トルコと日本のような、お互いを思いやる国際関係を築く小さな一歩となればと願います。 (上毛新聞 2010年3月24日掲載) |