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◎花づくりで地域連携 春を告げる花木には黄花が多い。節分前に早々と名乗りをあげるロウバイ、次のオウバイやサンシュユもそうだし、間もなくレンギョウも真黄色に咲き乱れる。冬の眠りから目覚めきらない大地をトントンとたたいて、鮮やかな存在を際立たせるには何といっても映える色合いだからだろうか。 さて、こちらに移り住んで14年、季節ごとの花々のもてなしに満たされているが、ひときわ心にしみる場所がある。旧吉井町の馬庭地区にある“サルビア街道”である。街道といってもわずか350メートル、幅は20センチしかない。そこにサルビアの花がずらっと一列植えられている。ただそれだけなのだが、そこに込められている花づくりへの思いと広がりを知って見る目が変わってきた。 そもそもをたどれば、5年前、地域の農業用水路の改修が行われた折、水路と道路の間にタイヤ1本分すき間ができたという。舗装で埋めてしまえばそれまでだったが、せっかくだから花を植えようということになってサルビアが選ばれた。それ以来、700本の苗木は公的支援で用意され、植え付けと管理は地元の人たちのボランティア活動で育ててきたということだ。 ところが、この花づくりはそれで終わらなかった。こんなに地域が潤い、みんなに喜んでもらえるなら私も協力しましょうという人々が次々に現れ、「馬庭景観花づくりの会」が誕生。沿道のあちこちにコスモス畑、マリーゴールドの花園などができた。近くでバラをつくっていた主婦が、畑を拡張して本格的なバラ園に仕上げるやら、その先にはシャクナゲ園が生まれ、最近はパンジーの交差点も加わって、一帯はフラワーガーデンのようになってきた。サルビア街道が人々の心を刺激し、美しい景観を作ろうという連帯感になって実を結びつつあるのだ。 アメリカの絵本作家ターシャ・テューダーも、ドイツの文豪へルマン・ヘッセも後半生を庭づくり・花づくりにささげ、そこから自然を学びとったというが、花づくりが人と自然を結びつける原点だという証しがここにも生きている。 実は、このサルビア街道に悩みがある。立ち上がりは県の道路景観事業で、その後は農水省の環境保全事業の支援でここまできたのだが、これがいつまで続くか保障がないという。しかも、公的支援を得るには、細かくてややこしい書類をその都度提出する。これが大変なのだ。 地域主権といい、新しい公共などと大仰に構えるまでもない。こうした草の根の住民活動を優しく支援し、継続させることから住民主役の時代が始まる。公共は、書類や型式に頼るよりも現場を見て良いものをその目で判断し、きちんと申し送っていく姿勢を大切にしてほしいと願う。 (上毛新聞 2010年3月22日掲載) |