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◎地域おこしの原動力に わが国でも、グローバル化が進むにつれ、都市部では人間関係が希薄になりつつあるが、農山漁村では、今なお人間関係が重要である。特に農協青年部や消防団などの青年団が地域活動を担っている。市民活動という視点から考えると、その芽は、大都市から地方に波及していくのではなく、むしろ地方の方が着実に実施され、今でも確実に受け継がれている。 日本の農村の青年団の集まりには新しいイメージは決してないが、市民活動の入門編として重要な役割を果たしている。活動の多くは既存の活動で、減少の傾向にあるが、青年団は若人が社会性に目覚め、地域の課題を考え始める上で重要な役割を果たしている。「協働、協力」の意識を学ぶ絶好の機会である。地域のほとんどの若人は、参加する当初、仕方なしに参加することがあるが、次第にその活動にのめり込んでいくのは仲間と一緒に地域社会のための事業をやり遂げる楽しさを知るからだろう。 現在の農山漁村は多くの問題を抱えている。これまで、農山漁村には、人の空洞化、土地の空洞化、村の空洞化という三つの波が次々と襲いかかってきた。1960年代からの高度成長に伴って農山漁村から都市部への人口流出が始まり、80年代後半からは、耕作放棄地、管理放棄された林地が増加。そして90年代からは人口減少や高齢化によって機能が低下する地域が増えている。それでも青年団を経験する人々が家庭を持ち、社会の中堅となる時期を迎えると再び地域のことを意識し始め、ネットワークを活用して地域の課題への取り組みを持とうという本格的な地域おこしが彼らによって始められる。 甘楽富岡地域では、地域リーダーの中から、自分たちの地域に誇りの持てないような状態でよいのかという素朴な問いかけがおこり、それが地域おこしの原動力になっている。また、彼らは外部の視点もうまく取り込み、新しい形の地域振興に取り組んでいる。こうした青年団のひとつであるJA甘楽富岡青年部OBの協力により、われわれの国際協力活動は成り立っている。彼らは、地元の資源である自然や文化そして伝統を誇りに活動をする。地域の問題をネガティブにとらえるのではなく、ユニークな資源として利用する発想である。そして同地域での強靭な農業青年の力が結集して地域振興と国際協力を目的に2008年9月「甘楽富岡農村大学校」が設立され、彼らの指導のもと多くのことを学び経験した研修生が国際協力のため、世界中に飛び立っている。 甘楽富岡の地域振興の経験や甘楽富岡農村大学校の取り組みこそ、技術協力という枠組みにとらわれることなく途上国に伝えることのできる新しい国際協力のスタイルである。 (上毛新聞 2010年3月19日掲載) |