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日本銀行前橋支店長  柴山 卓也(前橋市大手町) 



【略歴】埼玉県生まれ。一橋大卒。日本銀行では、米国ブルッキングス研究所客員研究員、総務人事局、金融機構局などを経験。一昨年5月、前橋支店長として着任。



開かれた組織



◎広く聴き、広く伝える




 日本銀行の経営指針は三つ。第一に、安定的かつ効率的な業務の遂行。第二に、学習とそれを踏まえた実践。そして第三に、今回のテーマである「開かれた組織」。言い換えれば、広く聴き、広く伝えるという組織文化をはぐくむことである。

 まず、広く聴くこと。中央銀行は「サービス業」だ。その提供するサービスの品質を高めるためには、環境の変化を的確にとらえるとともに、外部の意見に耳を傾け、その背後にある考え方をしっかり理解しなければならない。若手職員には、自戒を込めて、(1)自分を突き動かす好奇心や問題意識を持つ(2)さまざまな意見に耳を傾ける(3)得た情報を自分の座標軸でとらえ直す、といった心構えを説いている。最近は、群馬県の観光の現状と課題を考えるため、県内各地を訪ね、意見交換を重ねた。常に思うことであるが、現場の意見を直接聞くと、問題意識が刺激され、自分の引き出しも増える。

 次に、収集・分析した地域経済情報などを広く伝えることも重要な責務だ。このため、マスメディアや講演の機会を大切にしている。日本銀行の政策運営やその背景にある金融経済情勢に関する判断、群馬県経済の現状や展望等を分かりやすく伝えることは極めて重要な使命だ。そこで、時間が許す限り、職員にコメントを求める。読み手、聞き手の立場から有益な助言を受けることができる。

 なお、講演等は行務の一環である。時々照会を受けるが、謝礼はお断りしている。これは日本銀行員の心得の一つである。

 他方、インターネットを通じた対外情報の発信にも注力している。日本銀行の支店のホームページは各支店が独自に運営している。十人十色だ。当支店も、一昨年来、掲載する内容の拡充、新着情報サービスの提供など工夫を重ねてきた。先月も、より親しみを持っていただけるよう、一部を見直した。前橋支店を開設した経緯、わが国の歴史に登場する群馬県およびその周辺にかかわりが深いお金の話、業務の内容などについて、写真やイラストを交え、分かりやすく紹介している。ぜひ、インターネットで「日本銀行前橋支店」を検索していただきたい。

 また、春休み期間中、政治経済や公民などを教えている教員の方々を主な対象とするセミナーを初めて開催する予定である。「教員の方々は春休みも多忙であり、応募者は少ないのではないか」とも聞く。小さな一歩かも知れないが、前に踏み出すことが大切であると考えている。さらに昨夏に好評を博した親子見学会も開催する。いずれも、詳細は私どものホームページに掲載している。ご参加いただければ幸いである。






(上毛新聞 2010年3月9日掲載)