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前橋地方気象台長  元木 敏博(前橋市元総社町) 



【略歴】青森県生まれ。気象大学校卒。札幌や奄美大島などの気象官署、気象衛星センターに勤務。観測部情報管理室長、熊本地方気象台長など歴任。09年4月から現職。



局地的大雨への対策



◎異変察知後すぐに避難




 近年、ごく狭い範囲で強い雨が降る局地的大雨が各地で増加し、気象災害が発生しています。アメダスが整備された1976年からの1時間降水量50ミリ以上の全国の回数は、86年までは1000観測所当たり160回ですが、最近の11年間は239回に増えています。群馬県内では、2008年7月27日午後の局地的大雨では、みなかみ町の湯檜曽川支流で渓流をすべり降りるグループが、宝川では下山中の夫婦が流されました。県外では、翌28日には、神戸市灘区の都賀川が急激に増水し、水遊びの子供たちが亡くなりました。

 にわか雨も局地的大雨も積乱雲からの雨ですが、降り方が違います。単独の積乱雲の場合は、寿命も短く広がりも狭く、にわか雨を降らせて衰弱します。大気の状態が不安定になり、積乱雲が発達して組織化すると、雨の降り方が変わります。傘をさしていてもぬれるような土砂降りとなり、局地的に数十ミリの大雨を発生させることがあります。

 気象台では、大気の状態が不安定になると予想した場合、前日や当日の天気予報で(1)大気の状態が不安定(2)天気が急変するおそれ(3)所により雷を伴う―のキーワードで局地的大雨が発生しやすいことを伝えます。雷注意報では落雷や急な強い雨に加え、竜巻などの激しい突風のキーワードで現象の激しさを伝えます。今年の出水期からは、5分ごとの気象レーダー観測、突風や雷のナウキャストで、積乱雲の発達の程度や短時間の移動の情報を伝えます。

 気象技術や通信手段の発達で、きめ細かな即時の気象情報を利用できるようになってきましたが、屋外では、気象情報を入手できないことがあります。このような場合は、「麦わらを三つ束ねるわずかの間に雨が降る」という意味で使われることわざ「御荷鉾の三束雨」のように、自ら空模様や周辺の状況を判断することが大切だと考えます。

 群馬県は渓流が多いところです。渓流に限らず河川、下水管、用水路、周囲より低い場所、くぼんでいるガード下(アンダーパス)は、水がたまりやすいので危険です。このような場所では、局地的大雨、周りに降った雨、また、強い雨が降っていなくても上流で降った雨が数分から数十分で流れ込むことがあります。

 気象台では、市町村や教育委員会を通して、局地的大雨から身を守るための注意を呼びかけています。発達した積乱雲が近づくと、周囲が急に暗くなり、雷鳴が聞こえ、冷たい風が吹き出し、大粒の雨が降り出します。渓流の川釣り、屋外の工事などでは、時々空模様を見て、異変を察知した場合は、すぐに避難してください。特に、遊んでいる子供たちは周囲の状況の変化に気づきにくいものです。保護者は、事前に避難経路も見ておいてください。







(上毛新聞 2010年3月4日掲載)