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音曲師  柳家 紫文(東京都杉並区) 



【略歴】高崎市出身。1988年、常盤津三味線方として歌舞伎座に出演。95年、2代目柳家紫朝に入門。都内の寄席に出演中。著書に『紫文式都々逸のススメ』など。



ながめ余興場の魅力



◎「演芸」を核に飛躍を




 みどり市大間々町に「ながめ余興場」という芝居小屋があります。1937(昭和12)年築のこの小屋は、唐破風付きの外観、客席が650、廻まわり舞台、黒御簾(みす)、花道、桟敷などを備えた日本でも有数の芝居小屋です。

 といってもこの「ながめ余興場」、東毛の人たち以外ほとんど知られていません。かく言う私も9年前までは全く知りませんでした。

 ここは一般の人からすればただの古い芝居小屋ですが、演 やる側からすればさにあらず、立派なホールは数々あれど、こんな魅力的な所はなかなかありません。

 「この舞台に上がってみたい」。ここには役者、芸人にそう思わせる空気が満ちているのです。ここは「群馬の誇り」ともいえる芝居小屋なのです。

 ただ劇場は使われてこそ価値があるもの。なのに今まであまり使われていないようでした。箱、ハードはあるけど中身、ソフトがない、そんな感じです。

 このままではもったいないと、地元でこの小屋を愛し保存維持している「ながめ黒子の会」の人たちと協力して、2002年、年4回の定例演芸会を立ち上げました。その後、町の協力で大間々の菊祭りの期間中の公演「菊華寄席」が加わり、年に12、3回の公演に。以来9年、今では町内は元より、近郊、近県からお客さまがたくさん足を運んでくれるようになりました。

 来演した芸人も、みな喜んでくれます。「ためしてガッテン」の立川志の輔師匠、「笑点」の三遊亭好楽師匠などもこの小屋が大好きで、自分の落語会を主催しています。「ぜひ、演芸会をやらせてください」と大間々に足を運んで以来、たくさんの公演が行われて演芸の文化が根付いてきました。

 次の目標は、ここを「演芸のながめ余興場」と呼ばれるようにするということです。もちろんこれだけの芝居小屋ですから、歌舞伎や文楽など、多様な興行ができることが一番です。が、やはり「先立つもの」が問題になります。

 私が「演芸」というのは、この理由があるからです。演芸は舞台装置もリハーサルも不要、出演者等の数も少ない。圧倒的に経費が少なくすむのです。

 そしてそれ以上に大事なこと、実はこれが一番なのですが、「演芸は老若男女だれでもわかるし楽しめる」こと。しかも、笑いは健康にも一番です!

 それに、ここ大間々は「演芸の都」浅草と始発駅同士という縁ですし。

 みなさんぜひ、ながめ余興場に来て見てください。すばらしい芝居小屋であり、群馬の誇る文化財の一つであることがわかっていただけると思います。

 何卒(なにとぞ)、これからも「ながめ余興場」をごひいきに、隅から隅まで、ずずずい~と、御願いあげ奉ります!





(上毛新聞 2010年2月28日掲載)