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数学・科学研究家  鈴木 数成(前橋市総社町)  



【略歴】群馬大大学院修了。群馬大、明和短大などで非常勤講師を務め、科学教室や野外活動を通しての人間育成にも力を入れる。ボーイスカウト前橋第3団所属。



太陽はどこに?



◎感動味わえる体験活動




 「太陽は、東から出て南を通り、西へしずみます」

 小学校3年生の理科の教科書にある一文。確かに、観察すると太陽はこの通りに動いている。誰もが当たり前と思うこの一文と現象。私は何の疑問を感じずにこれを覚え、テストの時にマルをもらっていた。

 ところが大学生の時のこと。塾講師をしていた私は、当然、太陽の動き方を先の一文のように教えていた。ある時、「太陽が北に見える場所はあるのですか」と質問を受けた。受験問題にあったらしい。

 問題になるくらいだから「ある」のだろうが、正解を即答できなかった。結果は「ある」のだ。南半球においては多くの場合、北にある太陽を見ることができる。ちょっと考えれば分かることだが、当時はその現象と一文との知識しかなく、応用が利かなかった。

 こんな失敗談がある。アフリカへ一人旅をした時のことだ。大陸の最南端へ向かうために私は車を借りて、太陽を目印にとにかく南へ走らせた、つもりだった。しばらく走っても目的地にたどり着かない。なぜだ? ここは南半球。反対の方向に進んでいたのだ。

 たかが太陽、されど太陽。フランス在住の時、友達から「北半球でも太陽が北に見えるところがある」と聞いた。私がフランス語を聞き間違えたのではなく、「確かにある」というのだ。

 その場所は北極圏。白夜のころには太陽が沈まないので太陽が北に見えるという。なるほど、理論的には理解したが、腑(ふ)に落ちない。

 その夏、バカンスになるとすぐに車を北へ走らせた。場所はノルウェーの最北端ノールカップ。早く見たくて、寝る間を惜しんで4千キロ弱の距離を走った。到着したその場所には1棟の建物と地球儀のモニュメント、北に広がる北極海。そして太陽は北極海の上にあった。

 そこで北の空を見ていると、海面に沈むことなく、確かに太陽は北の空を反時計回りに回っていた。知識はあったが、それを体験したときの衝撃ともいえる感動は今でも忘れられない。

 種類は異なるが、同じような感動を味わったことのある人なら分かってくれるであろう。机上では味わうことができない、自分で動いたからこそ得られた特別な感動であることを。

 「人は主体的に活動する時に考え、心が動き、実践力やたくましさが育っていく」。私は自身の体験からそう考えるようになった。だから子どもたちにはもちろん、誰に対しても、机上で得た知識を知恵に変える、感動を味わうことのできる体験活動を大切にしてほしいと願っている。

 どんな小さな活動でもいい。やってみたいと思う活動には取り組んでみてほしい。感動とともにきっと新しい自分を発見できるに違いない。感動は待っていてもやって来ない。








(上毛新聞 2010年2月23日掲載)