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◎子どもたちに読む力を 先日、学校図書館利用者から、原作と映画を見比べた感想を聞きました。「すべての音が消える演出があったが、原作で読んでいたからわかった」というのです。文字情報が細かな心の動きを理解させたのです。 そもそも「読書」とは、どんな精神活動なのでしょう。文章を見て、「知ってる、あれだ」「あのことかな」と知識や経験と関連させて理解し、さらに読み進んで、先を予測したり、類推したりしながら、書かれた内容に自分の知識をつないでいく活動です。考えながら、問いながら、順序立てて整理し、理解を深めていきます。その結果、言葉が豊かになり、知性を発達させます。 しかし、一足飛びに、読めるようになるわけではありません。たとえば、入園したばかりの幼児は、園のくつ箱やロッカーに名前とともに張られた飛行機やチューリップの絵で、自分の場所だと記号の意味を理解します。読み聞かせてもらって理解する段階から、徐々に自分で読めるようになり、内面と向き合う段階に移っていきます。 ところが、子どもたちが本にふれる経験が減っていると危惧(きぐ)されるようになってきました。テレビやゲーム、習い事、塾などで、子どもたちの生活が変化してきたのです。 微力ですが、私たち学校図書館担当職員も、読み聞かせやブックトーク(テーマに沿って複数の本を紹介する手法)、広報紙等で、子どもたちを本の世界に誘っています。「楽しい」「読みたい」気持ちを引き出します。 また、機会あるごとに本の「読み方」を教えています。多様な読みが、日常の生活や生き方にまで結びついてほしいのです。「全体をつかむには、タイトルや前書き、目次を見るといい」「本だって間違うときもある。活字を読むときも、『ホントかな』って、批判的読みもしようね」「似ている本も読んでみよう」(比較読み)。統計・グラフ・地図の読み方も教えます。これはPISA型読解力につながります。このように、幅広い「読み方」を身につけるには、体系的かつ長期的計画的に行うことが、必要です。学校の時間割に組み込むことが有効だと思います。 そこでは読書の導き手がまず、本の楽しさ、作品そのものを楽しむ喜びを伝えることが大切です。主体的な読みにつながりますから。さらに、「読み方」を教えることです。多様な読みが、視野を広げ、読書の幅が広がります。 今年は国民読書年。読書を楽しんでみませんか。 (上毛新聞 2010年2月9日掲載) |