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◎強みの認識が勇気に 古くからの友人が、この春、保育士として就職する。といっても彼女は初めての就職ではない。高校を卒業してすぐに正社員として働き2~3社転職、その後フリーターとして数年働いており、今は社会に出て10年以上たっている年齢だ。一昨年の春、保育士になりたいと短大に入学、この春で卒業となる。 就職を控えた彼女が今熱を入れていることは、保育園の教材作りだ。これがうなるほどうまい。フェルト生地で作った紙芝居、色紙で作った門松、見ていて気持ちがいいほどの上手さとスピードで次々に愉快な教材を作っていく。力作の数々を見るたびに、彼女があの時、保育士になろうと思い立たなかったらこの能力はどこにいっていたのだろう、と思う。 いくつかの職場でうまくいかず転職を経験し、その後のフリーター生活から転じて、年齢的なハンディを感じながらも、彼女が学校に入り直すという自己決定ができたきっかけは、「強み」を認識できたことだった。アルバイト先の先輩から「子どもとの接し方が上手だね」と言われて、お店に来た子どもの対応係になった。そういえば昔から手芸や絵の評価が高かったことを思い出し、保育士が浮かんだ。できないことはたくさんある、では好きなこと、強みは何だろう。仕事を任されたことがきっかけで、そんなふうに考えられた。 彼女が自己選択できたのは、他者からのフィードバックにより自分の強みを知り、自分自身に対してその強みを評価してあげられたからではないだろうか。人が最初に自分の強みを知るのは、他者とのかかわりの中である。他者からの評価により自分の気付かなかった強みを知り、今度は自分の強みを自分で評価できるようになる。この自己評価が重要であり、就労への過程においては、自分の強みを知ることで自己決定する勇気が持てるようになる。 相談援助の中でストレングス視点というものがある。これは、弱点や問題点に焦点を当てるのではなく、本人が本来持っている潜在的能力や強みに焦点を当てる考え方だ。就労支援において、実は強みといっても特別な能力や技術である必要はない。約束を守れること、体力があること、地味な作業を続けられること、いつもにこにこしていること、へこたれないこと、どれも社会の中で役に立つ強みである。われわれは支援者として、「この人の強みはなんだろう、社会の中でこの強みが活いきるのはどういう場だろう」というストレングス視点を持って若者と関わり、その中から見出したオリジナルですてきな強みを本人にフィードバックしていくことが、主体的に自己の進路を選択・決定できる力を育てるのではないかと思う。 (上毛新聞 2010年2月2日掲載) |