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◎毎年の出品が大きな力 年が変わり新しい年が始まる時、人は皆胸の内にその年の希望を静かに祈るものだろう。それは家族の健康であったり、仕事のことであったりするかもしれない。 私の場合、毎年初めに「全群馬近代こけしコンクール」というものがあって、いつも受験生のような心持ちになる。良い成果が得られれば、と願うのが常だ。 今年も2月11日から15日までの5日間、県庁・県民ホールで開催されるが、今回は50回目の節目にあたり、主催する群馬県をはじめ、県こけし協同組合など関係する人々が皆、盛会を期して準備を進めている。 ちなみにコンクールはこけしの品質、意匠の向上、こけし美の普及、発展などを目的として1959(昭和34)年度に第1回が開催されている。思えば昭和30年代半ばという時期は、日本が高度成長期といわれる時代に入っていく始まりの時期である。当然販路も拡大していく時であり、作り手それぞれのエネルギーが満ち満ちていた。携わる者も皆若く意欲的で、作品もそれを反映して力強さがあふれていたように思う。 それから50年余りの歳月を経て経済、社会そして人のこころのあり様も随分と変わってきたなかで、作り手は研けんさん鑽努力を積み重ね、品質、表現共に向上させながら新しい作品を生み出してきた。県内作家の力作がその年初めて一堂にそろい鑑賞できる数少ない、良い機会であり、ぜひとも大勢の方々に来場していただきたいと思っている。 私は1978年の第18回からずっと出品し続けてきたが、独立以来30年以上、職業としてこけし作りを続けることができたことを振り返る時、コンクールに欠かさず出品してきたことが大きな力なってきたように思う。30歳の正月に独立し、その年のコンクールに初出品したこけしが今も大事に置いてある。小さく稚拙な作品だが、修業時代、先輩の職人の人たちの下仕事を毎日続けながら、独立したら自分の作りたいものを作ろう、こういうものを作ろうと思い描いていたものである。若く、怖いもの知らずだった。評価されるなど思いもしなかったが、図らずも後援の新聞社の賞を受けることができ、その上審査講評の中で特別に褒めてもらった。スタートラインに立った時背中を押してくれたその時の言葉は一語一語、今も鮮明に覚えている。 コンクールと名のつくものに出品する限り、安堵もあり、落胆もある。その中で刺激を受け、励まされもし、切せっさ磋琢たくま磨しながらやってきた。残念ながら今、作り手が年々減って来ている現状がある。こけしを作り始めた契機は人によりさまざまである。願わくばコンクールを観みて、創作意欲を刺激され、こけし作りに興味を持ってくれる人がいたらと思う。 (上毛新聞 2010年1月30日掲載) |