視点 オピニオン21
 ■raijinトップ ■上毛新聞ニュース 
.
NPO法人Jコミュニケーション代表理事  高橋 清乃(前橋市駒形町)  



【略歴】前橋女高卒。日本語講師。2000年にニュージーランドの小学校などで指導。03年に伊勢崎市に日本語教室開設。県などの委託で市内外で日本語を教える。



孤立する日系外国人



感謝の気持ちで支援を




 団体旅行で海外に行って、なぜか1人だけホテルに取り残され言葉が分からず困っている、という状況になったら、あなたはどうしますか。私は英語が分からず悔しい思いをしたことがあります。ニュージーランドの小学校で教えていたとき、職員室での先生たちの会話が分からず、話しかけられて困ったような顔をすると、大きい声で聞いてくるのです。聞こえないのではなく、聞き取れない、もしくは英語で答えられないだけなんですが、声が大きくなっていくのです。「意味はわかりました」と言うのが精いっぱいでした。

 現在、日系ブラジル人、ペルー人は、そのような状況にいるのと同じではないでしょうか。彼らは仕事が忙しいからと簡単に日本に入国が許され、言葉が分からなくても派遣会社を通じ、言われるままその会社に行って仕事をしていました。それが突然、仕事がなくなったからと解雇され、紹介してくれた派遣会社は無くなり、自分でハローワークに行き、仕事を探さなくてはならない状況になってしまったのです。

 ハローワークに行っても求人票を読むどころか、自分の名前をカタカナで書くこともできないのです。また会話もままならない人たちですが、そんな彼らに「ここにハローワークがあるよ」と大きな声で言っても「だからどうしたらよいのか」わからないのです。仕事がないので、教室で日本語を習うお金はありません。勉強に来た人たちは皆「勉強すると日本語が分かるようになる」とはわかっていても、通えなくなってしまいました。教室を運営していくにはお金がかかるので無料で教えるわけにもいかず、心の中がもやもやとした葛藤(かっとう)の日々です。

 うれしいこともあります。タイへの衣料支援が何とか続いていることです。元生徒が自分のふるさとのタイに帰るときに衣服を持って行くと聞いて、少しでもお手伝いできたらと、友人に声をかけ、きれいな洋服を集め送ることにしました。買ったほうが安いとはいいますが、相対的に衣料が少ないので、お金を渡しタイで買うよりも日本から送ったほうが良いものがあるようです。送料が1箱5000円と結構かかりますが、受け取った人たちが喜んでいる話を聞くと、また送ろうと思ってしまいます。タイの北のほうで、冬は寒くなるそうで、ジャンパーやコートなどの冬物衣料もとても喜ばれています。

 日本語教室もタイ支援もともにまだ続けていきたいので、まずはかかわってくれたみなさんに感謝を。「応援するよ」と気軽に会員になってくれた友人に、教室に来て手伝ってくれる友人・知人に、そして時間もお金も犠牲にしてくれている夫に感謝!





(上毛新聞 2010年1月28日掲載)