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◎心の幸せは「傾聴」から 自分自身をそのままに認めてくれる人がいたらどうであろうか。心は幸せ感に包まれ、明日への活力となっていこう。 しかし、現実は、違う。心を病む人が多い。なぜか。心と心とのキャッチボールの不器用さがその原因の一つである。 ある夫婦のある日の会話から考えてみたい。今日は結婚記念日である。一緒にお祝いをしようと計画をしていた。しかし、夫から突然の電話。「今日は残業になってしまった。すぐに帰れない」という。さて、あなたが妻なら何と答えるであろうか。 「残業では仕方ないわね。わかったわ」、あるいは「昨年もそうだったじゃないの。何とか断れないの」など、ではないだろうか。 前者は受け身型と言い、自分の気持ちを納め、我慢している。後者は攻撃型と言い、感情を前面に出して抗議している。 さて、これらで2人の心はうまく通じ合っているのであろうか。否である。心と心のキャッチボールには至ってないからである。 受け身型は我慢である。心の底に少々の恨みが残る。一方、攻撃型も言いたいことが怒りに変わり、本当に大切なことを伝えていない。やはり不満が残る。 そこで、お勧めは率直型となる。「事情はわかったわ。でも私の気持ちも聞いて。とても楽しみにしていたので本当に残念なのよ」。こう言えば、どうであろうか。 夫も心を開く可能性が高くなり、「そう、ぼくも同じ気持ちだよ。申し訳ない」。こうなれば気持ちが通じ合い、お互いが許し合えてこよう。そして、お祝いをする以上のものが得られてこようというものである。 では、なぜわれわれはこのような率直型の会話ができず、心と心のキャッチボールが下手なのであろうか。わが国の文化が関係しているように思う。われわれの文化は、人と人とが衝突しないよう気を配り、空気を読み合う習慣がある。 しかし、その読み合いが裏目に出ることもあると言いたい。先ほどの妻の「わかったわ」も夫の立場も配慮し、「残念だけれど理解します」と伝えているつもりである。が、夫側には記念日を妻が軽く思っていると伝わることもありえる。では、どうしたらよいか。 伝え方を工夫することである。それにはしっかり聴いてもらえることが条件となる。そうなら安心して自分自身の心に向き合い、本音を見つけ話すことができる。心と心のキャッチボールがこうしてスタートする。 心の健康は、聴いてくれる人がいて初めて得られるものである。 (上毛新聞 2010年1月25日掲載) |