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◎完全救済の保険に驚き 昨年4月に学長として前橋に着任するまで、私はシカゴ大学で40年間にわたって、医学物理と放射線医学に関する研究と教育に従事していました。そこで、この経験を生かして県立県民健康科学大学を、大きく飛躍させ、日本一流の、そして世界にも通用する大学にしたいと考えています。ここでは、シカゴでの経験などについて私の意見を述べさせていただきます。 2000年6月23日のシカゴの夜。私は、大学院学生の学位審査の成功を祝う食事を少人数の先生たちとチャイナタウンで楽しみ、小雨の中を帰宅する途中、家に近づくにつれて消防車の数が多くなるのに気がつきました。一体どこが火事なのかと思っているうちに、わが家の周りにたくさんのホースが転がっていて、わが家が火事だと分かりました。 消防士に、家の持ち主であることを告げると、状況を説明してくれました。その日の午後8時ごろに、大きな雷が2、3度落ち、その後30分ほどして、裏の家の奥さんが屋根から火の粉の上がるのを発見、あわてて消防署に連絡したのです。 消防士たちは、留守であるため、屋根の上からの消火と、さらに、玄関をおので壊して家に侵入し、火元と思われる2階の部屋の内部からの消火活動をしたのです。雷は、れんがでできた暖炉の煙突に落ち、屋根裏で発火したため、火が他の部屋にも広がっていないことを確認するために、他の部屋のクローゼットの天井はぶち抜かれており、家中は消火のために水浸しになっていました。しかし、家具やテレビなどには、被害を防ぐために大きなカバーがかけられており、クローゼットの中の洋服等の衣類は、まとめてベッドの上に保管されていました。 その夜は、家で寝ることが町の規則で許されず、消防署長の計らいで、近所のホテルに泊まったのです。署長は、「壊れた玄関の臨時錠と火事で穴のあいた屋根にプラスチックのカバーをする緊急支援会社の作業員がまもなく到着するが、何も心配するな、費用は保険会社が持つのだ。大切なのは、明日一番に保険会社に連絡することだ」と教えてくれたのです。 それから半年後、わが家は火事のことが全く分からないほどに改修改善され、11月29日に移り住むことができました。それまでに必要だったすべての費用は、保険で完全にカバーされたのには、とてもうれしかったと同時に大変な驚きでした。アメリカでは、このような突然の災害に対して被災者を救済する家の保険についてのインフラが高度に発達し、極めて良くできていることを初めて知ったのです。日本でもこのようなことができないかと願っているのですが、詳細については、次回この欄で述べる予定です。 (上毛新聞 2010年1月13日掲載) |