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下仁田自然学校運営委員  小林 忠夫(埼玉県坂戸市)  



【略歴】長野県出身。東京教育大卒。新潟県内の中学校、高校で教諭を務めた後、地学団体研究会事務局に勤務。下仁田自然学校には創立準備当時から携わっている。



下仁田自然学校から(1)



自然に学ぶ教育の原点




 下仁田自然学校は、1999年に同好の有志11名によって下仁田町に設立された民間の学校です。自然に学ぶ教育と研究の道場として、下仁田町の全面的な支援と協力を得て、町が設置した自然史館を提供していただき、ここを拠点に運動を展開してきました。

 有志の大部分は、現役を引退した理科教員で、設立する学校には、つぎのような希望をもっていました。 第1は、地質の宝庫といわれている下仁田の自然を相手に、自然をまるごと体験できる野外での教室を、子どもたちとともに学びながら実践すること。

 第2は、宝庫といわれながら未解明の課題が多い下仁田の地質を、じっくり腰を据えて研究すること。

 第3は、体験教室の経験や研究の成果を、町のみなさんと共有して、ここから町おこしを考えること。

 希望は高く掲げましたが、暗中模索、モデルのないゼロからの出発でした。そして、今年で10周年を迎えました。依然、試行錯誤は続いていますが、ようやく次のような学校ができあがってきました。

 設立の趣旨に賛同して年会費を納入する約580名の後援会員が、学校の支持母体です。この中から、自薦他薦で選任された63名の評議員、ここから選任された12名の運営委員、5名の事務局員が、学校の運営母体です。

 さらに、まわりから学校を支援する協力会員や、行事への参加を登録している友の会の会員などを加え、約650名が現時点の下仁田自然学校の構成員です。隔月に学校だより「くりっぺ」を刊行して、構成員に届けています。

 子どもたちとの体験教室や、町のみなさんとの野外観察会など、野外での行事は月に一度の割合で計画され、10年間に企画実施した行事は、自然教室や講演会など8種類、221回、5904名が参加しています。さらに、依頼をうけて出かけた出張教室は、保育園から老人会まで計80回になります。

 これらの経験をとおして、わたしたちは、現職の教員時代にはできなかった、「自然に学ぶ教育の原点」を模索する楽しみを味わうことができました。そしてそれは、子どもたちから学ぶよろこびでもありました。

 研究活動は、同好の有志が合議でテーマをきめておこなう団体研究の方法に学び、鏑川団体研究会、本宿陥没研究会、関東山地団体研究会、金剛萱遺跡研究会などが結成されて、研究がすすめられています。

 そして、町おこしは、「下仁田ジオパーク」を目指す運動として展開されつつあります。次回以降に、これらの経験を順に紹介することにします。







(上毛新聞 2009年12月27日掲載)