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ザスパ草津チーム統括マネージャー  橋本 毅夫(前橋市駒形町)  



【略歴】東京都出身。順天堂大卒。C大阪、2002W杯日本組織委、選手代理人業務などさまざまな分野からプロサッカー界にかかわる。06年からザスパ草津勤務。



移籍金制度の撤廃



求められる戦略的計画



 Jリーグでは、来季に向けた選手のクラブ間移籍時に発生する、移籍金制度等の見直しを行いました。

 今回は、大きく変更となった移籍金に関することのみにふれさせていただきます。今までの制度では、契約期間が満了した選手に対して、現所属クラブに契約継続の意思があれば、当該選手が他クラブへ移籍した際、定められた計算式に従い、移籍元(所属元)クラブは、移籍先クラブに対し移籍金を請求することができました。

 しかしながら、この移籍金制度は、先人たちがプロサッカーリーグを立ち上げ、走りながら作成・修正を重ねてきたJリーグ独自のFIFAルールには適合しないものであり、これを一気にFIFAルールに合わせた形としたのが、今回の改正です。

 このルール改正により、クラブは選手との契約期間内における他クラブへの移籍のみ「違約金」という形で、金銭を受け取ることができます。これは一見、人身売買のような形で見られる場合もありますが、相応の価値(戦力)のある選手を抜かれてしまうわけですから、金銭面で折り合いを付けるのは当然のことであり、プロサッカー界ではごく自然に行われています。

 さて、それでは、今回の改正により、選手・クラブにはどのような影響が出てくるのでしょうか。

 選手に対しては、「プロフェッショナル」としての評価がより厳しくなるということです。良い選手は、他クラブへの流出(移籍)を食い止めるため、より高額な年俸と、複数年契約を提示されることになります。一面で、良いことばかりに聞こえるかもしれませんが、クラブも選手に費やせる予算に限りがあり、同じチーム内で選手の年俸格差がより明確に出てくると思われます。

 また、クラブにはチーム強化・選手編成のより戦略的な計画性が要求されることになります。11月になると、Jリーグの各クラブは、本格的な来季に向けた選手編成・補強に入ります。自チームの所属選手との交渉、契約継続しない選手へのフォロー、同時に他クラブの選手に対しての交渉、外国人選手の獲得調整、また、日本のみならず、海外の選手代理人も自分が契約をしている選手の売り込みをしてきます。そのすべてが同時進行で進みます。そこに今回のルール改正により、今までとは違った流れが出てきました。

 今オフは、このルール改正により、誰も経験したことの無い、次のステージで移籍交渉等が進みます。もちろん「ザスパ草津」もその中にいます。








(上毛新聞 2009年12月17日掲載)