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◎自立を支援する場所に ある休み時間の学校図書館、生徒がやってきて、「授業で、太宰治は死ぬ少し前に『人間失格』を書いたって教わったけれど、いつですか?」「それなら、年譜が付いているものを見ましょうね」と案内する私。学校図書館では、先生方の授業での活用はもちろんですが、このように、日々生徒たちが、疑問に思ったこと・知りたいことや調べたいことを解決しにやってきます。 ここ学校図書館は、本、新聞・雑誌、インターネットを駆使して、子どもたちが、自発的に、問題解決の練習をする格好の場です。生徒は、たずねれば、他の図書館や機関と協力して回答してくれることも知っています。私は、こう伝えています。学校図書館は(1)知りたいことが調べられます、あなたが必要な判断ができるように(2)困難なことを乗り越えられます。あなたの「○○になりたい」を、そっと後押しします(3)ひとりひとりを尊重します。いろいろな考えを大切に保存している場所ですから(4)創造性を育てます。図書館の資料は好奇心を刺激します(5)自分らしさを取り戻す場所です。精神の自由を保障する空間です―と。 近年、「生きる力」を育(はぐく)むとして、調べ学習、新聞活用などで、また、子どもの読書活動推進など、学校図書館に対する期待が、ますます高まっています。 一方、市町村により状況は異なりますが、県内の多くの小中学校図書館は、人がいないため、利用したくても閉まっていることがあります。貸し出しだけではない多くの仕事が理解されないでいます。また、教科書だけを教える教育が長く続いたことも、学校図書館の理解を妨げました。 学校図書館は、子どもたちが、高度に発達した情報社会を生きぬけるように、調べ方を知り、情報を比較し、選び、考え、調査したことに責任をもって、人に伝えられるように、自立を支援するところです。 学校図書館が、その機能を十分果たすためには、ひとつには、教育的に魅力的な本を収集することが求められます。その図書群が利用者の創造力を刺激しますから。選択眼と予算措置が必要です。二つめには、先生も子どもも学校図書館をいつでも使えるように、また的確な資料を提供できるように学校司書を配置すること。三つめは、読書教育です。そして、四つめは、教員養成課程と司書養成課程に「学校図書館」を入れることです。理解が深められ、さらに協力して自発的な学びを広げられると思うからです。 自分で決定して、自分のことができる。幸せなことだと思います。自立を支援する教育は、子どもたちの未来のために国家が与えられる最高の宝物だと思いませんか? (上毛新聞 2009年12月13日掲載) |