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NPO法人「キャリア倶楽部」ユースコーディネーター  中澤 由梨(前橋市粕川町)  



【略歴】前橋女子高、筑波大卒。メーカーを経て、2007年からぐんま若者サポートステーションに勤務。群馬、埼玉でニートなどの若者の就労支援に携わる。



若者の自己肯定感



第三者の視点で高めて



 私が現在勤務しているのは、若者が社会とのつながりをつくるための就労支援機関である。そこは、仕事をしてもなかなか続けられない、ブランク(仕事に就いていなかった期間)が長く自立するきっかけがつかめないなどの理由で現在職業的自立が果たせないでいる若者たちの就労サポート機関だ。とはいっても来所する利用者は、就労経験のある若者がほとんどで、いったんはアルバイトや正社員で働いた後、その中でのなんらかの経験によりマイナス思考に陥るなどでうまく動き出せないでいる場合が多い。利用者の若者たちと比較的世代の近い私だが、彼ら彼女らの声を聞く中で日々大切なことに気づかせてもらっている。

 私自身、前職で努力してもうまくいかなかった時に、辞めた方がいいに違いないなどと思い身動きがとれなかったことがある。自分を肯定できなくなってマイナス思考のスパイラルにはまっていた。そんな中、友人と仕事の話をしている時、「頑張ってもうまくいかない、辞めたい」などとつぶやいていると、友人がにこりと一言、「それって、その仕事がもっとできるようになりたいって心から思っているからこそ悩むんだねえ」。その言葉で、悩んでいることの意味づけが変わった。これは私の向上心からきているのかと、自分を肯定し認めることができた。

 若者についても、私の経験と同じようなことが言える。利用者の中には、「2回も辞めたことがあるので、もう雇ってくれる会社はない」と思い込み、身動きがとれずに苦しみながら来所する若者もいる。そんな時、私たちはいつも大事にしているこの言葉を伝える。「過去は変えられないけれど、過去の見方と表現は変えられる。第三者の視点によって意味付けを変えることができる」。例えばブランクがあっても、その期間の意味づけを再考し、社会に対し表現できるようになる。第三者と一緒に考えることで、自分だけだと陥りがちなマイナスの見方を脱し、自分に対する見方を変えることができるのである。

 利用者の若者は、自分を認め、励ますことが苦手なことが多い。元々苦手な方もいるし、私のように一時的に自分を肯定できなくなっている方もいる。加えて、社会経験が浅かったり就労経験が少なかったりすることが影響し、自己肯定感が極端に低い場合も少なくない。中には自分ができないことばかりを10も20もリストアップしてくる若者もいる。しかし、現在の雇用情勢の中では、自分を肯定し、自分の良さを表現することができなければ、働き出し、そして働き続けることは容易ではない。若者自身が本来持っている力を社会に表現できるように一緒に考えることが、第三者としての私たちの役割の一つだと日々実感している。






(上毛新聞 2009年12月6日掲載)