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電通 メディア・プランナー  一文字 守(東京都品川区)  



【略歴】高崎高卒。慶応大大学院修了。電通勤務。マーケティング、営業部門を経て、現在はメディア・プランナーとしてさまざまな広告主の広告計画立案に携わっている。


広告をどう見るか



◎3側面から新しい発見



 皆さんは普段「広告」を意識することがあるだろうか。この上毛新聞にも多くの広告が掲載されているし、テレビをつけても、ラジオをつけても非常に多くの広告に接する。一般に、日本人が1日に接する広告は4000とも5000とも言われている。このように膨大な広告接触の中で、いかに目立つか、いかに伝えたいことを伝えるか、にわれわれ広告マンは日夜腐心している。

 広告には、あるいは商品には必ず「ターゲット」が存在する。ターゲットとは、いわば最もその商品を買ってほしい人たちのことだ。例えば、入れ歯安定剤を十代の方が買うことはまれであろうし、電動シェーバーは女性にはあまり関係のないものだろう。入れ歯安定剤のターゲットは入れ歯をしている方々であるし、電動シェーバーのターゲットは日々ひげをそる必要のある人たちだ。一般には前者は60歳以上の高齢者であるし、後者は20代以上の男性ということになる。

 そのターゲットに魅力的な商品情報を伝え、購買に向かわせるのが広告に期待される大きな役割である。広告は、クリエーティブ(制作)とメディア(媒体)の両輪で成り立っている。クリエーティブとは、どのような表現手法が最もターゲットの心を動かすことができるかを考え、それを具現化していく作業である。ターゲットによって伝わりやすい表現手段は異なる。どのタレントを起用するのかもこの領域に含まれる。

 一方、どんなに優れた表現ができても、それをメディアにのせないとターゲットに届けることはできない。ターゲットによって届きやすいメディアと届きにくいメディアが存在する。

 テレビは老若男女をカバーできるメディアであるが、高年層には新聞が絶大な力を持っている。また、若い世代にはモバイル(携帯電話)が強いメディアとなっている。このメディアの最適な組み合わせを考え、計画立案するのが、私が従事している「メディア・プランナー」という仕事である。ターゲットのメディア接触状況を分析し、予算内でなるべく多くのターゲットにメッセージを伝達すべく、媒体計画を構築していくのである。

 また、どのメディアを使用するかで、クリエーティブも変わってくる。先に「両輪」と書いたのはそのような意味も含んでいる。

 皆さんもターゲット、クリエーティブ、メディアという3側面から、日々接する広告を「裏読み」してみると新しい発見があり、より広告を楽しめるのではないだろうか。また、自社の広告に携わっている方は、いま一度、上記3側面から再考してみると広告戦略が変わってくるかもしれない。店先の看板やポスター一つでも成果が変わってくるのが、広告活動のシビアかつ面白いところであるのだ。





(上毛新聞 2009年11月23日掲載)