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◎賢く付き合う知識を 金融広報中央委員会が今年3月に公表した「金融に関する消費者アンケート調査」の結果をみると、過半数が、「金融経済の仕組みについてほとんど知識がない」と自己評価している。このうちの5人に2人は、「金融のことを知らなくても生活していける」と考えている。 果たしてそうか。今日では、簡単にお金を借りることができる。例えば、買い物に出掛ければ、クレジット機能がついたカードの勧誘を受ける。分割払いやリボルビング払いの利用は借金である。またカードローンは、インターネットで申し込み、コンビニのATMで資金を引き出すこともできる。はた目には、預金の引き出しか、借金か、見分けがつかない。 私も金融の世界で生きている。借り入れを否定するつもりはない。しかし、その前にじっくりと考えてほしい。返済能力(=将来の収入)を過大評価していないか。複利で膨らむ利息の重さを軽視していないか。金融のことを知らなくても生活していける時代ではない。 むしろ、私は、早い時期から、お金と賢く付き合うための基礎知識を学ぶことが極めて重要であると考えている。そこで、機会があれば、社会に出る前にぜひとも理解しておいてほしいことを高校生に話している。 先日、玉村高校から、創立87周年の開校記念行事として催された講演会に招かれた。全校生徒に対し、例えば、(1)収入の中から少しでも蓄える習慣を身に付けることの重要性、(2)複利の「威力」などを説明した。昨年は、桐生西高校と大間々高校に出掛けた。なお、これらの講演資料は日本銀行前橋支店のホームページに掲載している。 借金の怖さは複利の威力にある。そこで、「七二の法則」を紹介した。金利(%)と期間(年)の積が72になる場合、元本が2倍になるという意味である。厳密ではないが、見当をつけることはできる。例えば、金利が年18%の場合、全く返済しなければ、借入残高は4年後に2倍になる(72÷18%=4年)。毎月返済しても、利息の支払い分だけで相当な金額になる。「そのお金で何が買えたかを考えてほしい」と訴えた。 冒頭で紹介したアンケート調査によれば、学校で金融教育を受けたと認識している比率は4%にすぎない。他方、学校における金融教育については、「もっと積極的に取り組んでほしい」という回答が6割弱を占めている。 教育現場はさまざまなカリキュラムで手いっぱいと聞く。それでも、金融について無防備な状態で学生が世に出て行くことは避けたい。関係各位の一層の工夫・努力を願いたい。私も、金融の世界で育てて頂いた恩返しのつもりで、こうした啓発活動に微力を尽くしたいと考えている。 (上毛新聞 2009年11月16日掲載) |