視点 オピニオン21 |
■raijinトップ ■上毛新聞ニュース |
. | |
|
|
◎できることから行動を 国民運動にまでなっている日本の食料自給率の向上について最近、ポスターを制作した。タイトルは「日本のレシピを考える」で、六本木の国立新美術館での展示を終えて全国へ巡回中である。制作にあたって日本の現状を知ると他人(ひと)ごとではないほど関心が高まる。日ごろ、食事を選ぶ時に、ふと食料自給率の話題を意識するようになった。 日本の食料自給率は年々低下し、現在41%と先進国の中で最も低い水準であるという。他の先進国の自給率を見ると、イギリス70%、ドイツ84%、フランス122%、アメリカ128%、オーストラリア237%(2003年カロリーベース)である。 日本でも1960年ごろまでは79%であった。その後、数十年の間に、私たちの食生活の大幅な変化が低下の起因となっている。年々、冷凍や加工食品、脂肪分の多い食品が増加している。それらの食品は原材料の多くを輸入に頼り、食料品の60%を占める。 また、わが国では増産すべき自給農業資源としての水田などが十分に活用されず、耕作放棄地や不作付け地が拡大している。さらに、新興国の人口増加による食料需要の増大、バイオ燃料需要の急増、異常気象の影響による農業生産の減少など、世界規模での深刻化が予測される中、日本の食料自給率の低下は大変危惧(きぐ)される。 もし、世界の食料需給が危機に直面したなら、輸出国は自国内の供給を優先し、輸出は抑制することになるだろう。その時、日本は国内生産だけでは国民へ安定した供給はできないだろう。そこで、今、私たちがすべきことは何か。それは、安心して食べられる社会を守ることであり、日本の豊かな食文化を子供たちの世代へ引き継ぎ、食料をめぐる問題を国民の間で共有し合うこと。そして、日本の食料自給率の向上を目指して、自分たちでできることから行動を始めることではないか。そんな考えから食料自給率向上の国民運動「FOODACTIONNIPPON」が昨年、始まった。 この運動の趣旨は、「『いまが旬』の食べものを選ぶ」「地元でとれる食材を日々の食事に」「ごはんを中心に野菜をたっぷりバランスよく食事に」「食べ残しを減らす」―などみんなの力が必要なのである。「おいしいニッポンを残す、創つくる」の実現を目標に2015年までに自給率45%を目指して取り組んでいる。 さて、このことを実践している川場村を先日訪れた。地元では「地産地消」が徹底され、昨年度の米の品評会では、国際大会で最高賞である金賞に輝いた川場産「雪ほたか」、そして米粉のパンの開発品、地元産の野菜などが田園プラザで販売されて人気を集めている。このような村民の人々に食料自給率アップの行動を今後も応援したい。 (上毛新聞 2009年11月7日掲載) |