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◎出会いが生んだ財産 この時季になると毎年頭を悩ませることがある。それはわずか400~500字で本年の回顧と新年の見通しや抱負を文章にしなければならないからである。こうしてできた文案で年賀状を作り始めてかれこれ30年以上は経過しただろうか。 今では、今年はどんな年賀状が来るのだろうかと楽しみにしているという感想をよく聞くようになった。それ故に一層苦労をする。さらに、枚数も700通近くになっている上に宛名と余白の一言は必ず自筆で書いており、年末の一大作業となっている。 こんなにも枚数が増えてしまったのは銀行時代の職務経験に起因している。調査部ではマクロ経済を勉強したし、広報担当として新聞記者との対応や大蔵省(現財務省、金融庁)・日本銀行の窓口(いわゆるMOF坦)もやらせてもらった。 こうした担当を通して本当に多くに人と出会った。年に一度年賀状のやりとりをしておけば、お互い常に会っている状態と同じで、何か聞きたいことがあればすぐ連絡がとれ、適切なアドバイスも受けられる。次男の就活の時もそうであったし、関係する団体での講師依頼も快く引き受けていただいている。 ある時、わが家に前橋財務事務所長となって赴任したI氏が訪ねて来られた。彼がまだ若き大蔵省主計マン時代に出会ったのであるが、前橋に行ったらまず初めに顔を出そうと思って来てくれたとのこと。当時は国家予算に変動金利という概念が取り入れられておらず、私のアドバイスにより初めて導入したことをなつかしく語ってくれた。 その後大蔵省と銀行MOF坦との癒着が社会問題化し、今はこうした担当者はいなくなったが、当時は議論や意見交換を通じ懇親を深めることができた。 趣味でも出会いがきっかけとなっている。実家近くに絵画や彫刻をコレクションしている方がおり、時々見ているうちに、私も集めてみようと思うようになった。これがそもそもコレクターとしての始まりである。 また、私の趣味を知っていた銀行時代のお客さまは、ご子息の結婚披露宴で、その後芸術院会員になられた女流彫刻家の隣に私の席を設けて下さった。彼女からは毎年日展のチケットが届く。このように趣味を通しても多くの人と出会った。 支店長も西日暮里と新宿新都心と性格の違う2カ店を経験し、そこでも多くの出会いがあった。当然ではあるが銀行の上司、同領、部下たちとの賀状交換も数多くある。また、学生時代の同級生、大学ではゼミOB会長を卒業以来続けており、後輩たちとの交換も多い。 いつまで続けることができるかどうかはわからないが、700枚を私の貴重な財産と思い、これからも一期一会を大切に、年賀状を書き続けようと思っている。 (上毛新聞 2009年11月3日掲載) |