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◎将来のリスク吟味を 私は群馬県内の高校、専門学校、大学などで金銭トラブル防止のためのセミナーを何度かやった。そのときよく学生に話したのが、クレジットカードの正しい利用方法だ。 読者のみなさんにこのような質問をしてみたい。「次に述べるAとBのクレジットカード使用方法の本質的な違いは何か。会社役員Aは取引先との付き合いでスナックに飲みにいったところ、支払いが3万円だったが、たまたま持ち合わせがなくクレジットカードで代金を払った。女子学生Bは22万円する有名ブランドのバッグを4万円の6回払いのクレジットで買った」。答えは、Aは自分の財産の範囲内でクレジットカードを使っているが、Bは自分の財産を超えてクレジットカードを使っている、ということである。 自分の財産を超えてクレジットカードを使うということは、借金をしてものを購入しているのと同じだ。クレジットカードを使う人は、分割払いについて借金をしているという感覚を持っていないかもしれないが、分割払いは立派な借金である。クレジットの分割払いは安易にしてしまう借金の典型例だ。 そして、安易にしてしまう借金の代表は、住宅ローンである。何千万という高額な借金であるのに、「家を持って一人前」程度の感覚でローンを組む人が多い。本来、借金は後ろめたいものだ。しかし、住宅ローンには後ろ向きなイメージはあまりなく、むしろしてもいい借金のように思われている節すらある。これは経済が右肩上がりの時代、国策として、ローンを組んで家を購入することが奨励されてきたことによるのだろう。しかし、いまはいつリストラされ、または会社が倒産するか分からないような経済情勢である。高額の住宅ローンは、このような経済情勢においては、リスクが高いと言わざるを得ない。 私にサラ金の相談をしてくる人の中には、リストラや減給で住宅ローンの返済がきつくなり、サラ金に手を出してしまったという人がけっこういる。そのような人は、「まさか減給されるとは思わなかった」「こんなことになるとは思わなかった」とよく言うが、本来、ローンを組むときに将来のリスクを十分に吟味しなければならない。 もちろんどうしてもローンを使わなければならないときもあるだろう。たとえば、生活に車が欠かせず、かつ、どうしても一括では車を買えないときなどだ。ただそのときでも、足だと割り切ってできるだけ安い車を選ぶといったような考え方が必要だと思う。大切なことは、クレジットやローンの分割払いは借金をしてものを買う行為であることを自覚することである。 (上毛新聞 2009年11月1日掲載) |