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◎環境先進国に変身を 鳩山新政権が衆望を担っていよいよ動きだした。マニフェストに盛ったさまざまな政策課題の具体化に向けて一斉に着手したが、「総花主義」「大きな政府」への危惧(きぐ)もつきまとう。新政権には、それよりも骨太な環境先進国への道筋とその肉付けに、的を絞ってもらいたい。国家戦略の名にふさわしい、いわば「環境先進国への変身」に、あえて挑戦してもらいたい。その理由を述べてみたい。 第1は、環境共生型の社会モデルの追求は、まさしく時代が求めているからだ。危機的状況の地球環境への警告は1968年のローマクラブの提言「成長の限界」以来すでに久しいが、ようやくここに来て機が熟してきた。先般の国連気象変動サミットがそれを物語っている。首相の野心的な温暖化ガス削減目標の提示は、こうした絶妙のタイミングで行われ、世界の注目を浴びた。この機運を逃してはならない。 第2に、環境重視の政策志向は、元来自然風土を大切にする日本国民の伝統信条と合致していて、国民的な合意形成は十分達成可能だ。先の首相提言にしても、国民の大多数が賛意を示している(世論調査)。国際競争力を阻むとの産業界の消極的空気にも確かな変化が始まっている(経済同友会)。「市場経済万能主義の帰結」(環境破壊)は誰の目にも明らかだ。こうした大目標への国民的努力の結集には、「国民所得倍増計画」の達成という先例もある。 第3は、わが国の環境技術水準は、国際的に見て比較優位にあるからだ。累次の石油危機を乗り切ったわが国の省エネ、新エネ技術などは先端的な地歩を築き上げ、現に、温暖化ガス排出量は対GDP比で、先進国中最も少ない。この実力をバネに内外に積極的に事業展開すれば、困難視されるエコノミーとエコロジーの両立もあながち不可能ではない。 問題は、環境政策をいかに具体化していくかだ。それには、政策の整合性の見地からまずもって個別政策を再吟味することだ。高速道路の料金無料化やガソリン税の暫定税率の廃止は棚上げする一方、脱ダム方針を明示することだ。研究開発予算の重点化や環境税の検討も必要だろう。途上国の支援にも「クリーン開発メカニズム」方式を盛り込むことだ。要は、各環境政策の政策ベクトルを大きく束ね合わせることだ。 最後に付言したい。昨年来の世界大不況も、見方を変えれば「天与の配剤」ではないか。「グリーン・ニューディール」という申し子を、各国に胚胎させたからである。 (上毛新聞 2009年10月23日掲載) |