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◎伝承普及の担い手に 「紙芝居って、芝居なんですね。やってみると、本当に難しいですね。でもこんな仕事がやってみたかった」と50代のモリさん。「ねえ! バイト?」と小学6年生の女の子に言われた20代の雨ちゃん。そして、女性で職人を目指すちーちゃん。 10月からあそびの学校が運営する「あそびの職人養成所」に入所した3人である。この3人には新たなスタートであるが、開校9年目のあそびの学校にとっても新たな挑戦である。 この事業、藤岡市が国の「ふるさと雇用再生特別基金」を活用し、厳しい雇用情勢の中、NPOのあそびの学校と連携し、失業者を雇用、失われつつある日本の伝統的なあそびを市内の子どもに伝承普及するという全国でも極めて珍しい取り組みである。 事業を委託されたあそびの学校では、9月よりハローワークや新聞チラシ等で「職人見習い募集」と宣伝したところ、なんと36人もの応募があった。 特にハローワークの求人職種では、該当する職種が無く、なぜか「紙芝居師」があったので、「紙芝居師等」で募集した。終戦後の失業者が大量に紙芝居屋になったことが職種欄に残っていたようで、「時代は繰り返す」と不思議な思いであった。その後、前代未聞のオーディション(筆記、紙芝居やけん玉等の実技、面接の3科目)を経て3人を選考し、10月の入所となった。 この「あそびの職人養成所」は、現代の子どもの地域での生活やあそびの現状を踏まえ、成長発達に欠かせないあそび、特に日本の伝統的なあそび技術(紙芝居、こま、けん玉等)の現代的継承と、あそび場等地域環境づくりも担える専門家を養成しようと、演劇の分野で言えば、あの無名塾や富良野塾にあやかって昨年設立したものである。 そういう中、東京の荒川区教育委員会でも、この10月から貴重な伝統工芸職人(指し物、勘亭流文字、木版画彫等)の後継者育成に乗り出した。産業振興を目的にこのような支援を行う自治体はこれまでにあったが、教育委員会が行うのは全国でも珍しいという。 あそびの職人も伝統工芸の職人も文化の継承である。しかし、この取り組みが単なる文化の継承にとどまらず、未来を担う子どもや若者の育成につながることが重要である。 あそびの学校としては、この機会を活(い)かし、藤岡の「あそびの職人養成所」があそびのメッカとなり、そして、藤岡の子どもは「勉強ができるし、あそびもうまい」となるよう大いに頑張りたいと思う。 (上毛新聞 2009年10月18日掲載) |