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◎ほど遠い「持ち直し」 リーマンショックから1年経過した。100年に1度と言われた世界的な金融・経済危機からわが国の景気がどこまで回復してきているのか調べてみよう。 現状の景気については、「このところ持ち直しの動きがみられる」(政府9月8日月例経済報告)、「下げ止まっており、持ち直しに向け着実に歩を進めている」(日銀9月9日須田審議委員発言)とし、政府、日銀とも上昇過程にあるとする景況判断である。果たして本当に持ち直しているのか、周囲を眺めてもとてもそうした気はしないのだが。 支店長時代のかかわりで電材卸会社の社外取締役に就いている。街の電気工事屋さんが商売相手であり、売り上げ増には住宅やビルの建設が必須である。設備や住宅関連に動意が見られない現状では売り上げは散々である。7月には前年同期比40%のマイナスで、利益どころか資金繰りにも支障をきたすと懸念したが、公共投資の案件も出てきて、上半期全体では20%前後のマイナスで落ち着きそうである。しかし、これでは損益分岐点すれすれであり、10名ほどの社員を削減したいが、社長は創業以来リストラの類はやっていないので、なんとか乗り切りたいと頑張っている。中小企業はこんなところではないだろうか。 「街角景気」の指標として、小売店主やタクシー運転手に景気動向をヒアリングする景気ウオッチャー調査がある。8月は前月比悪化してしまった。小売店や飲食店の売り上げ不振、天候不順や新型インフルエンザの影響から景気の先行きを懸念している結果である。 雇用であるが、情勢は一段と悪化してきた。7月の完全失業率(季節調整値)は5・7%と過去最悪を記録した。同月の有効求人倍率(同)も3カ月連続で悪化し、過去最低を更新している。生産や売り上げが伸び悩む中、雇用調整がさらに進む恐れが懸念される。 私の関連するグループで厚生労働省の緊急人材育成・就職支援基金事業として、ビジネスパソコン基礎3カ月コースを無料で県内5カ所において120名ほど募集したが、受講条件が厳しいにもかかわらず、すぐ満員となってしまった。 このように見てくると、景気の持ち直しという判断も、各指標がL字から逆Jカーブに移ったにすぎないと言える。唯一V字型回復の指標に国内新車販売台数(軽自動車を除く)があるにはあるが、すべて15兆円にも及ぶ大規模な補正予算が寄与している政策的な景気上昇であり、自律的な上向きではない。ただ、自動車産業は住宅と並んで景気波及効果も大きいのでぜひ本格的な景気回復へつなげたいものである。 したがって、新政権には補正予算の見直しも結構だが、景気回復の腰を折らぬようスムーズな執行をお願いしておきたい。 (上毛新聞 2009年9月23日掲載) |