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◎必要な共に歩む姿勢 人間は、ある時代の中で家族の一員として誕生し、地域で暮らし、社会構造の中で適応すべく勉学し努力を重ね、生命の一回性を生きる存在です。しかし、高齢期になり、多くの人が病や障害、機能低下などで「~できる」ことから「~できないこと」を否が応でも経験する。つまり喪失体験を味わうことになり、心理的には不安・混乱・戸惑い・焦り・落胆などのプロセスをたどります。 そのような時期、家族を含め他者の世話を受けますが、私たちの社会は2000年から介護保険制度を実施し、介護を社会的な仕事にしました。介護者はそんな状況の利用者と仕事を通し関係性を構築しながらケアすることになる。人と人とが良好な関係をつくるには、お互いを尊重できるかどうかによります。従ってケアの基本はまず、「その人」を知ることから始まり「その人」が精いっぱい生きている事実をしっかり見つめ、ある時は見守り、支えることになります。 「その人」の生活を支えるには、その人の困りごとは何か、どう生きたいのか、あるいはどう支援をしてほしいのか―などを常に考え、どのようなケアが適切なのか根拠を基に、生きること・老いること・病むこと・障害を持つこと・死ぬことなど、人間のすべてに対して正面から向き合い、共に歩む姿勢が必要になります。つまり「その人」を全体的にとらえ、全人的に理解して人間として「望む」であろう意向に添い、現時点の「~できること」を探し「持っている力」を発揮しながら生きていけるよう支援することです。 心理学者のマズローによれば、人間の本質は「~できる」ことを望む存在であり、基本的に生活上の欲求を満たせば安心を求め、安心が満たされれば承認欲求になり、承認が満たされれば自己実現を求める存在である。つまり、いくつになっても「~できる」を実現し、「~を望む」存在なのです。 従って何より認識しなければならないのは、老人福祉法による高齢者を「長年社会に貢献してきた方々を尊重し、介護が必要になった場合は生活の保障をする」のが本来のケアの在り方ではないということです。それでは社会的弱者に対して「してあげたい!」という思い込みや、思い上がりのケアにつながる恐れがあり、私たちが作り出したいケアはこのような福祉観とは違うものです。 高齢者は生きる主体として、自己実現を図り、介護者は高齢者に必要とされ、知らず知らずのうちに自らの自尊心を満たされ元気、やる気、やりがいを持たせてもらっている事実をしっかり自覚し、「尊厳」を持ってかかわれる人材になることなのです。10月から始まる「県認定介護福祉士」には、この転換を図ることを期待したい。時代はこのような人材を求めています。 (上毛新聞 2009年9月10日掲載) |