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◎施策の飛躍的前進を 総選挙でにわかに、子育て支援、少子化問題がクローズアップされてきた。各党のマニフェストが出され、「幼児教育の無償化」「子ども手当の創設」「高校授業料の無償化」などの目玉政策が新聞等に大きく報道された。 長く子どもの地域での育ちを支援し活動してきた私としては、ようやく子育てに関する問題が、選挙の争点となったことに注目しつつ、この選挙を機に日本の子育て施策が、飛躍的に前進することを願わざるを得ない。 というのも、これまでの子ども施策は、「子どもを育てるのは親や家族の責任」として、子育て支援という子育ての社会化にはあまり熱心ではなかった。 例えば、今でこそ放課後の子どもの生活の場として、法制化され全国に約1万8千カ所ある学童保育であるが、各地で誕生当初は、行政の支援は全くなく、父母が民家やアパ―トを借りての自主運営であった。 父母が、役所に学童保育の厳しい運営を訴え、財政的にも支援してほしいとお願いに行くと「幼児ならともかく、なぜ小学生の子どもを保育しなければならないのか?」「親の都合で働いているんじゃないんですか」などと言われたそうだ。 また、今では専業主婦の子育て支援施設として、各地に「子育て支援センター」が設置されているが、10年ほど前には、専業主婦の子育てには全く福祉の光が当たらなかった。 自主運営の子育てサークル(専業主婦と幼児で組織)が専用の施設がないため、公民館の部屋を借りると「壁に子どもが傷をつけた」「子どもの声がうるさい」などと職員や他の利用者から言われ、肩身の狭い思いをしたそうだ。 このように、子育ての社会化は、子育て真っ最中の親の要求や活動によって、少しずつ行政に浸透し施策が図られてきたのである。 現在でもそうだが、施策の遅れとともに、「子どもや家族にかける予算」の貧困さも問題である。ちなみに、児童・家庭関連社会支出額は対GDP比0・83%と推計され、欧州諸国の2から3%と比較すると「子どもや家族を大事にしていない」と言われても仕方がない低さである。 そういう意味で、今回の選挙では、政権交代など目先の小さな選択ではなく、「将来こういう日本にする」という確固たる理念をもとに、そして、子育て支援や教育についても「何のために支援をするのか」「どういう子どもに育てるのか」「どういう子どもの未来を描くのか」という大きな選択が求められているのである。 (上毛新聞 2009年8月20日掲載) |